「恋愛ごっこ」してみないか?―恋愛のしかたを教えてあげる!
第12話 花火を見に来ないか?ー相当な覚悟をして来てくれた!
「今度の土曜日に多摩川で花火大会があるけど、部屋に来て一緒に見ないか? 部屋から花火が見えて綺麗だから、それに楽ちんだぞ」
「本当に部屋から花火が見えるんですか?」
「入室してから花火大会があって初めてベランダから見えるのに気が付いた」
「一緒に花火を見てみたいので行きます」
「それなら、6時に来てくれる。飲み物と食べ物を用意しておくから」
◆ ◆ ◆
土曜日、僕は朝から落ち着かない。沙知が僕の部屋に来るのは、インフルエンザで寝込んだ時以来だ。
この部屋で二人きりになってみたいと思い切って誘ってみた。沙知は二人に起こるだろうことを分かっていて相当な覚悟をして受け入れてくれたのだと思う。
二子玉川のスーパーへ行って、おいしそうなオードブルのセットと赤ワイン、ジュース、缶ビール、缶酎ハイなどを購入して、冷蔵庫で冷やしておく。
部屋の掃除、洗濯、片付けを済ませる。ベッドのシーツを替える。ベランダを掃除する。ベランダのガラス戸を磨いて、網戸を拭く。
グラスをもう一度洗う。部屋に消臭剤を撒く。トイレを掃除する。お風呂を掃除する。本棚を整理する。そういう時のためにあれがあるのも確認しておいた。
準備が終わったのが3時過ぎで疲れた! ベッドに横になったら眠ってしまって、気が付いたらもう5時になっていた。もう一度部屋の中を見て回る。部屋の温度を確認。準備OK!
◆ ◆ ◆
6時丁度に部屋のドアホンが鳴る。ドアを開けるとピンク地に赤い花模様の浴衣に真っ赤な帯を締めた沙知が立っていた。とても綺麗で可愛い。
すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢して奥に招き入れる。沙知は窓際まで歩いて行って外を見ている。
「花火の準備がしてあるのが見えますね。本当にここは特等席ですね。楽しみです」
「今のうちに飲んだり食べたりしないか? オードブルもあるし、暗くなる7時過ぎにならないと始まらないから時間がある」
「準備するのをお手伝いします。おいしいナッツがあったので持ってきました」
「お酒は何にする? ビール、赤ワイン、缶チュウハイ、ジンジャエール、ジュース、何でも用意してあるけど」
「赤ワインはどうですか? ここなら酔っ払っても心配いりませんから」
「いいね」
二人で赤ワインを飲みながら、オードブルを食べる。沙知の持ってきてくれたナッツがうまい。日没が近いが、外はまだ30℃以上ある。室内は冷房が効いて快適だ。
二人はソファーに座って、外が少しずつ暗くなっていくのを見ている。沙知のグラスのワインが少なくなっているので注いであげる。
「この赤ワインおいしいですね。少し酔いが回ってきたみたい」
そう言って、肩により掛かってきた。
「僕も気持ちよくなってきた」
お互いに寄りかかる。お腹が膨れてアルコールが入ったので、少し眠くなった。
いつのまにか二人はもたれ合って眠ってしまったようだった。「ドーン」という大きな音で目が覚めた。もう外はすっかり暗くなっている。沙知も目を覚ましたところだった。
「花火が始まったみたい」
「ベランダへ出ようか?」
ガラス戸を開けてベランダに出ると、ムッとした暑さだ。でも時々川風が吹いてきて不快というほどではない。
どんどん花火が上がっている。始めは二人で立ってみていたが、部屋の端に腰を下ろして花火を見ることにした。背中は部屋の冷房で涼しい。
「とってもきれい。聞いていたとおり、ここは特等席ですね」
「部屋の明かりを落としたほうが見やすいかもしれない」
部屋の明かりを落とした。沙知は花火を見ながら僕の手を握ってくる。そのうち肩に頭を寄せてきた。腕に沙知の柔らかい腕が密着するので肩に手を廻すと身体を預けてくる。良い感じだ。
僕は花火より気持ちがそっちの方に向いている。でもこうして身体を寄せ合っているとなぜか落ち着いてくる。
沙知を横目で見ると、とっても穏やかな顔をして花火を見ている。いつのまにか沙知は僕の腰に腕を廻している。
花火が終わった。長いようであっという間だった。終わってからもしばらく二人は動こうとしなかった。このままずっとこうしていたかった。
どちらからでもなく、自然にキスをした。沙知を抱き締めると抱きついて来る。
「今日は泊ってほしい」
耳元で囁くと、頷いてくれた。立ち上がって沙知の手を引いて寝室へ向かう。そしてベッドに倒れ込んだ。沙知はぎこちなく僕の腕をつかんでいる。浴衣に手をかけると身体を固くするのが分かった。沙知が耳元で囁いた。
「優しくしてください」
「ああ、優しくする。心配しないで」
そういうとしがみついて来た。沙知はこうして僕のものになった。
◆ ◆ ◆
この部屋は3階だから、明かりを消していても街灯のあかりが入ってきて、薄明るい。冷房は良く効いている。
沙知が布団の中から見上げて僕に話しかけてくる。顔が見づらい。恥ずかしがって布団にもぐりこんで中から顔を出さない。
「少し眠ってもいいですか」
「だめ、もう一度可愛がってあげたいから」
「もうこれ以上は無理です。まだ痛みがあって、ごめんなさい」
「分かった。でも少し話をしないか? そのままでいいから」
布団の中の顔と話しを始める。
「大丈夫だった」
「はい、でも思っていたよりも痛かったです」
「沙知さんを早く自分のものにしたくて力が入った。ごめんね、もっと優しくするんだった」
「いいえ、優しかったし、とても嬉しかった。それからもう沙知と呼び捨てにしてください」
「分かった。そうさせてもらうよ」
「私、こうなると思って、ビデオを見て、予習してきたんですが、やはり緊張してしまって、それに予想以上に痛かったので」
「痛がっていたのは分かっていたけど、途中でやめるわけにはいかなかった。ごめんね」
「うまくできましたか、よく分からなくて」
「ああ、うまくできたから」
「よかった」
「そのビデオは『処女喪失』ってやつかな?」
「そうです。何回か見てきました。でもやはり実際は違いますね」
「ビデオを貸してあげてよかったのか、悪かったのか?」
「見ておいてよかったです。心の準備というか、覚悟はできましたから」
「まあ、結果オーライということかな?」
「慣れてきたら、別のビデオのようなこともしてください」
「ああ、沙知の望みどおりになんでもしてあげる」
「ギュと抱き締めて寝てくれますか?」
「もちろん、いいけど」
「抱き締められたままで眠らせて下さい。あのあとにこうしてもらうのが夢だったんです」
「分かった。いい夢が見られるように、沙知、大好きだ」
布団の中に入って抱き締める。抱き締めるとこんな力があるのかと思うくらいに強い力で抱きついて来る。柔らかい身体が壊れそうになるけど抱き締める。そのまま静かに動かずにいると、いつのまにか二人は眠ってしまった。
◆ ◆ ◆
夏の夜明けは早い。4時ごろには明るくなってくる。腕の中で沙知が安らかな顔で寝ている。沙知は丸まって背中を向けて寝ていて、それを僕が後ろから抱きかかえるようになっている。
夜中にまどろみながら何度も抱き合ったり離れたりしていたような気がする。この形が一番落ち着くみたいだ。沙知の身体の温もりを感じるし、髪の匂いがする。この匂いが好きになった。こうしていると落ち着くし癒される。
寝顔を見ていたらまた眠ってしまって、沙知がベッドから抜け出して行ったのに気が付かなかった。バスルームのドアの音で目が覚めた。もうすっかり明るくなっている。
沙知はTシャツとミニスカートに着替えていた。やはり相当な覚悟をしてきていたんだ。着替えを準備していた。
「おはよう」
「おはようございます。昨日の残りで朝食と昼食を作りますから食べて下さい。朝食を食べてから帰ります」
「休みだからゆっくりしていけばいいのに」
「帰ってお洗濯やお掃除をしなければなりませんから。今週の土曜日には私の家へ泊まりに来てください。夕食を作りますから。今度は中華でどうですか?」
「もちろん喜んで」
「紙袋を貸してください。浴衣を畳んで持って帰りますから」
「その浴衣、とっても似合っていたね。それにとっても色っぽい」
「父が大学へ入学したときに作ってくれました」
「着替えも準備して来てくれたんだね」
「花火の浴衣で朝帰りするわけにはいきませんから、女の身だしなみです」
「ありがとう」
沙知は朝食の後片付けをしてから機嫌よく帰って行った。ありがとう、沙知!
「本当に部屋から花火が見えるんですか?」
「入室してから花火大会があって初めてベランダから見えるのに気が付いた」
「一緒に花火を見てみたいので行きます」
「それなら、6時に来てくれる。飲み物と食べ物を用意しておくから」
◆ ◆ ◆
土曜日、僕は朝から落ち着かない。沙知が僕の部屋に来るのは、インフルエンザで寝込んだ時以来だ。
この部屋で二人きりになってみたいと思い切って誘ってみた。沙知は二人に起こるだろうことを分かっていて相当な覚悟をして受け入れてくれたのだと思う。
二子玉川のスーパーへ行って、おいしそうなオードブルのセットと赤ワイン、ジュース、缶ビール、缶酎ハイなどを購入して、冷蔵庫で冷やしておく。
部屋の掃除、洗濯、片付けを済ませる。ベッドのシーツを替える。ベランダを掃除する。ベランダのガラス戸を磨いて、網戸を拭く。
グラスをもう一度洗う。部屋に消臭剤を撒く。トイレを掃除する。お風呂を掃除する。本棚を整理する。そういう時のためにあれがあるのも確認しておいた。
準備が終わったのが3時過ぎで疲れた! ベッドに横になったら眠ってしまって、気が付いたらもう5時になっていた。もう一度部屋の中を見て回る。部屋の温度を確認。準備OK!
◆ ◆ ◆
6時丁度に部屋のドアホンが鳴る。ドアを開けるとピンク地に赤い花模様の浴衣に真っ赤な帯を締めた沙知が立っていた。とても綺麗で可愛い。
すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢して奥に招き入れる。沙知は窓際まで歩いて行って外を見ている。
「花火の準備がしてあるのが見えますね。本当にここは特等席ですね。楽しみです」
「今のうちに飲んだり食べたりしないか? オードブルもあるし、暗くなる7時過ぎにならないと始まらないから時間がある」
「準備するのをお手伝いします。おいしいナッツがあったので持ってきました」
「お酒は何にする? ビール、赤ワイン、缶チュウハイ、ジンジャエール、ジュース、何でも用意してあるけど」
「赤ワインはどうですか? ここなら酔っ払っても心配いりませんから」
「いいね」
二人で赤ワインを飲みながら、オードブルを食べる。沙知の持ってきてくれたナッツがうまい。日没が近いが、外はまだ30℃以上ある。室内は冷房が効いて快適だ。
二人はソファーに座って、外が少しずつ暗くなっていくのを見ている。沙知のグラスのワインが少なくなっているので注いであげる。
「この赤ワインおいしいですね。少し酔いが回ってきたみたい」
そう言って、肩により掛かってきた。
「僕も気持ちよくなってきた」
お互いに寄りかかる。お腹が膨れてアルコールが入ったので、少し眠くなった。
いつのまにか二人はもたれ合って眠ってしまったようだった。「ドーン」という大きな音で目が覚めた。もう外はすっかり暗くなっている。沙知も目を覚ましたところだった。
「花火が始まったみたい」
「ベランダへ出ようか?」
ガラス戸を開けてベランダに出ると、ムッとした暑さだ。でも時々川風が吹いてきて不快というほどではない。
どんどん花火が上がっている。始めは二人で立ってみていたが、部屋の端に腰を下ろして花火を見ることにした。背中は部屋の冷房で涼しい。
「とってもきれい。聞いていたとおり、ここは特等席ですね」
「部屋の明かりを落としたほうが見やすいかもしれない」
部屋の明かりを落とした。沙知は花火を見ながら僕の手を握ってくる。そのうち肩に頭を寄せてきた。腕に沙知の柔らかい腕が密着するので肩に手を廻すと身体を預けてくる。良い感じだ。
僕は花火より気持ちがそっちの方に向いている。でもこうして身体を寄せ合っているとなぜか落ち着いてくる。
沙知を横目で見ると、とっても穏やかな顔をして花火を見ている。いつのまにか沙知は僕の腰に腕を廻している。
花火が終わった。長いようであっという間だった。終わってからもしばらく二人は動こうとしなかった。このままずっとこうしていたかった。
どちらからでもなく、自然にキスをした。沙知を抱き締めると抱きついて来る。
「今日は泊ってほしい」
耳元で囁くと、頷いてくれた。立ち上がって沙知の手を引いて寝室へ向かう。そしてベッドに倒れ込んだ。沙知はぎこちなく僕の腕をつかんでいる。浴衣に手をかけると身体を固くするのが分かった。沙知が耳元で囁いた。
「優しくしてください」
「ああ、優しくする。心配しないで」
そういうとしがみついて来た。沙知はこうして僕のものになった。
◆ ◆ ◆
この部屋は3階だから、明かりを消していても街灯のあかりが入ってきて、薄明るい。冷房は良く効いている。
沙知が布団の中から見上げて僕に話しかけてくる。顔が見づらい。恥ずかしがって布団にもぐりこんで中から顔を出さない。
「少し眠ってもいいですか」
「だめ、もう一度可愛がってあげたいから」
「もうこれ以上は無理です。まだ痛みがあって、ごめんなさい」
「分かった。でも少し話をしないか? そのままでいいから」
布団の中の顔と話しを始める。
「大丈夫だった」
「はい、でも思っていたよりも痛かったです」
「沙知さんを早く自分のものにしたくて力が入った。ごめんね、もっと優しくするんだった」
「いいえ、優しかったし、とても嬉しかった。それからもう沙知と呼び捨てにしてください」
「分かった。そうさせてもらうよ」
「私、こうなると思って、ビデオを見て、予習してきたんですが、やはり緊張してしまって、それに予想以上に痛かったので」
「痛がっていたのは分かっていたけど、途中でやめるわけにはいかなかった。ごめんね」
「うまくできましたか、よく分からなくて」
「ああ、うまくできたから」
「よかった」
「そのビデオは『処女喪失』ってやつかな?」
「そうです。何回か見てきました。でもやはり実際は違いますね」
「ビデオを貸してあげてよかったのか、悪かったのか?」
「見ておいてよかったです。心の準備というか、覚悟はできましたから」
「まあ、結果オーライということかな?」
「慣れてきたら、別のビデオのようなこともしてください」
「ああ、沙知の望みどおりになんでもしてあげる」
「ギュと抱き締めて寝てくれますか?」
「もちろん、いいけど」
「抱き締められたままで眠らせて下さい。あのあとにこうしてもらうのが夢だったんです」
「分かった。いい夢が見られるように、沙知、大好きだ」
布団の中に入って抱き締める。抱き締めるとこんな力があるのかと思うくらいに強い力で抱きついて来る。柔らかい身体が壊れそうになるけど抱き締める。そのまま静かに動かずにいると、いつのまにか二人は眠ってしまった。
◆ ◆ ◆
夏の夜明けは早い。4時ごろには明るくなってくる。腕の中で沙知が安らかな顔で寝ている。沙知は丸まって背中を向けて寝ていて、それを僕が後ろから抱きかかえるようになっている。
夜中にまどろみながら何度も抱き合ったり離れたりしていたような気がする。この形が一番落ち着くみたいだ。沙知の身体の温もりを感じるし、髪の匂いがする。この匂いが好きになった。こうしていると落ち着くし癒される。
寝顔を見ていたらまた眠ってしまって、沙知がベッドから抜け出して行ったのに気が付かなかった。バスルームのドアの音で目が覚めた。もうすっかり明るくなっている。
沙知はTシャツとミニスカートに着替えていた。やはり相当な覚悟をしてきていたんだ。着替えを準備していた。
「おはよう」
「おはようございます。昨日の残りで朝食と昼食を作りますから食べて下さい。朝食を食べてから帰ります」
「休みだからゆっくりしていけばいいのに」
「帰ってお洗濯やお掃除をしなければなりませんから。今週の土曜日には私の家へ泊まりに来てください。夕食を作りますから。今度は中華でどうですか?」
「もちろん喜んで」
「紙袋を貸してください。浴衣を畳んで持って帰りますから」
「その浴衣、とっても似合っていたね。それにとっても色っぽい」
「父が大学へ入学したときに作ってくれました」
「着替えも準備して来てくれたんだね」
「花火の浴衣で朝帰りするわけにはいきませんから、女の身だしなみです」
「ありがとう」
沙知は朝食の後片付けをしてから機嫌よく帰って行った。ありがとう、沙知!