君の隣にいられたなら。
嫌なことをされた記憶なんてない。
言えないようなやましいことなんてなおさら。
なんなら、私のお願いを聞いてくれた親切な人なだけで、綺音が心配していることが全くわからなかった。


ぽかんとしている私に、無事なら別にいいんだけどね、と苦笑いをする。


「あいつ、いっつも茉白可愛いって言ってるから、何かされてないかなってちょっと思っただけだよ」


そう言って綺音は私の頭にポンと手を置いた。


「私なんてきっと眼中にないよ」
「ま、高校生ってのは、そーゆーこと考えちゃうもんなんだよ。茉白みたいに可愛い子を目の前にしちゃうと」


あ、という顔をした綺音だったけどもう遅い。
私の顔は真っ赤だし、それを見て綺音の耳を少し赤くなった。
お互いわかりやすいタイプなのを思い出してしまう。


久しぶりに綺音に可愛いなんて言われて、どうしようもなくドキドキしてる。
綺音もたまにぽろっとこういうこと言うから昔から、ふとドキドキさせられることがあって。


「そういうこと、私に言っちゃダメだと思う」
「いや……ごめん。でも、ほんとに、そうだから」


しどろもどろになる綺音。
どんどん声が小さくなっていって、しまいには頭に置いた手をスッと引いて何も言わずに去っていってしまった。


ずるい。本当に。
好きな人、いるくせに。
< 17 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop