君の隣にいられたなら。
第5話 震える手
「まず、茉白さ?聞きたいことあるんだけど」
「なんでしょう?」


お昼休み。
実里は、本当に意味がわからないと言いたげな顔で私の顔を覗き込んでいた。


おやすみ中に、先輩と合ったことを話した。
誰かに言わなきゃ、キャパオーバーすぎた。


「鮎川夏葵先輩って、あの?有名な人だよね?」


実里は怪訝な顔で言った。


ゆうめい……?


ぽかんとしている私を見て、なーんにも知らねーやこいつ、と呆れた顔。
実里はこう言うとき、私の知らないことをたくさん教えてくれる。
そうして今日も、私の知らなさすぎることを教えてくれた。


「結構、女の子にあま〜いタイプの、ゆる〜い頭の先輩みたいだけど?」
「……へ?」
「要は、取っ替え引っ替え、とまではいかないけど、長続きしないみたいだよ?告白、断らないってよく聞くし」


……え?
先輩が?
私と図書室で会う時の印象と違いすぎる。別人じゃない?


そうは言っても、実里の言うことだし多分間違いじゃない。
火のないところに煙は立たないって言うし、事実ないとこんな噂も流れないと思う。
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