君の隣にいられたなら。
ゾワッと悪寒が走った。
まただ。
見たこと、ある。


「……え、何それ」
「……」
「今日初めて?ってそんなわけないよね?これも、そう?」
「……」


人差し指に触れる先輩に私は浅く首を縦に振った。


まじか……と呟く先輩。
恐る恐る顔をあげると、少し焦った顔。
出会って数週間、ニコニコ笑顔しか見てこなかった私には、それすら怖いと感じた。


「他に今まで何されたの?」
「……」
「紙とか入ってたんでしょ?」
「……」
「ごめん、聞かないって言ったけど、教えて欲しい。そんなに頑なに言わないってことは、綺音が原因じゃないでしょ」



図星だった。
原因は綺音ではない。
……目の前にいる、鮎川先輩。


「……」


何も言えなかった。
何も言えなかった代わりに、今日下駄箱に入っていた3枚の紙を取り出した。
ノートの切れ端のような、しわくちゃの紙。
私がお昼に握りしめてくしゃくしゃになった。
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