君の隣にいられたなら。
「せんぱっ、い」
「どうしたの?大丈夫?」
「……ごめんな、さい」
「茉白ちゃんは謝らなくていいんだよ。大丈夫だからね」
「ちが、あの、違うくて。
……先輩が、女の子関係にだらしないって聞いて、私先輩が優しいの知ってるのに、先輩のこと、ちょっと疑っちゃいました……」


すみません、とどんどん小さくなる私の言葉に、やっぱり今まで通り耳を傾けてくれる。
急かすことも、遮ることもない。
しっかり私の顔を見て、聞いてくれる。


「そんなの、今は気にしないの。事実俺の素行のせいで茉白ちゃんこんなことなっちゃってるんだから、謝らないよ」


先輩はどこまでも優しかった。
優しくて、優しくて、ほんとうに、涙が止まらなかった。


私が泣き止んだのは、閉校時間の校内放送が流れたからだった。


「こんな時間まで、すみません……」
「時間はいつもと一緒だよ。謝らなくていいからね」
「でも……」
「どんな形だったとしても、俺は茉白ちゃんと一緒にいれて嬉しかったからね。本当に。だから、責任感じなくていいんだよ」


先輩は私の背中を優しく押しながら、下駄箱まで連れて行ってくれた。


そこで、出会いたくなかった人に出会ってしまったのは、私が多分、本当についてないからだと思う。
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