君の隣にいられたなら。
「茉白?泣いてんの?」
「……っ、あや、と」
「何?夏葵に泣かされた?」


明らかな敵意を、綺音は先輩に向けている。


「ちが、あやと、ちが」
「そうだよ。俺のせいで茉白ちゃん泣いてる。
綺音は関係ない。だから、お前は首突っ込んでこないで」


止めようと口を開いた私を遮るようにして、先輩は綺音に言い放った。
そして、剥き出しの敵意が、先輩からも綺音に向けられた。


「っ、夏葵てめぇ。
茉白にちょっかいかけてるだけでも気になってたのに、泣かしてんじゃねえよ」
「……それに関してはなんも言えない。けど、お前に首突っ込まれるのだけは違うって思ってるから」


ピリピリとした空気が張り詰める。
そして、この現場にさらに緊張が張り詰めた。


「あれ、綺音〜?何してんの。まだ〜?」


女の子だった。
私の知らない、多分綺音のクラスの女の子。


「っ、ごめん。ちょっと待って。こっち今」
「行きなよ」
「……」
「お前が連れてる女だろ、責任持て」


本当にどうしようもないくらい緊張した空気に、綺音が女の子を連れて去って行ってから、私の足は使い物にならなくなってしまったみたいでその場にへたり込んだ。


わからなかった。
どうして自分がこうなったかはわからなかったけど。
何と無く失恋したんだと、そう思った。


私はその後、優しい言葉をかけてくれる先輩に家に送られて、熱を出した私は数日学校を休んだ。
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