君の隣にいられたなら。
彼がいてくれる間は、ずっと手がひんやり冷たくて気持ちよかった。
頬が懐かしい硬さに覆われた、そんな感覚もあった。


次に意識を取り戻したときには、コーヒー牛乳を飲み切った綺音が壁際に座って窓の外をのんびり見ていた。


◇ ◇ ◇


「茉白、久しぶり」
「あっ実里!心配かけてごめんね、もう元気だよ」
「よかった」


お昼休み、実里は優しい顔をして私を抱きしめてくれた。


「ところで、聞いた?」
「へ?何が?」
「茉白が休んでる間、休み時間に先輩がわざわざこの教室来て、これ見よがしに茉白にしてた嫌がらせ片付けてたみたいだよ」


……なんですと。


休んでいる間も、何度か先輩とは連絡を取っていた。
その間も、私の身体を心配してくれていたばっかりで、嫌がらせのことについては何も触れられてない。


けど、私が休んでいた間も、先輩は私のためを思ってくれていたみたいだった。
事実、今朝は下駄箱にも机にも何もされていなくて、もちろん何かなくなっているということもなかった。


「で、そんなときにメンタル強い女の子が話しかけに行っちゃったんだって。『あの子が悪いんだから、先輩かが片付ける必要ない』って。
先輩なんて言ったと思う?『好きな子が俺のせいで嫌がらせされてるとか胸糞悪いじゃん。それとも何?お前もそっち側なの?』だって」
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