君の隣にいられたなら。
「まーしーろ」


ふと、安心する声が聞こえた。
自然と肩に入った力が抜ける。


「あ、実里。どうしたの?」
「眉間に皺寄せちゃって。可愛い顔が台無しだぞ〜」


にっこり笑顔で私の眉間を突くのは、五月実里。私の親友。
お姉さん気質で、私のことをとても気に入ってくれてる、私の唯一のお友達で、親友。すごくいい人。
私が思い詰めていても、こうやってすぐに助けてくれる。
眉間にシワなんて気づいてなかった私は慌てておでこを押さえる。


「そんなことないよ。どうしたの?」
「教科書忘れちゃった。数学、ある?」
「あ、うん。今終わったとこだから返すのいつでもいいよ」
「おっけ〜。会えなかったらロッカー入れとくね」


実里はウィンクして帰って行った。しれっと私の胸ポケットに、『今日は一緒に帰るからね!クレープ』と書いたメモを入れていった。
手練れのそれだった。


実里に貸した教科書は、2限後にロッカーを覗くと入っていた。


『移動教室ぽかったから、入れといたよ〜。ありがとう、助かりました!クレープだからね!』


大事な時はしっかりしていて姉御肌なのが、普段のこの可愛げのある性格からは絶対に想像できないと思う。
こういう実里の、私のことが好きだと、今日が楽しみだと、全身全霊で伝えてくれる感じが本当に好き。
< 4 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop