君の隣にいられたなら。
好きな子、と実里の口から発せられたそれを聞き逃すことが出来なかった。
実里は呑気に、青春だよね〜とか言ってるけど、好きな子、とは???


「あれ、茉白。その顔は気づいてなかったって顔だね?ことが起こる前から校内中の噂だったのに、先輩が自分の口で認めちゃったものだから、もう校内中のゴシップと化してるわよ?」


当の本人はこんな感じだけど、と呆れたように笑う実里。


「先輩って、私のこと好きだったの?」
「知ってるのかと思ってた」
「……知らなかった」
「昔から鈍感だもんね」


病み上がりには刺激が強すぎる。
次、先輩にどんな顔して会えばいいんだろう。
会わなくていい、といえばそれもそう。
避けることも可能だけれど。
……お礼、言わなきゃだよね。



そんなことを悶々と考える私に、続けて降ってくる実里の声。


「ところで茉白ちゃん。あなたが休んでいる間に体育祭の競技決まっちゃったけど、茉白ちゃんは何に出ることになったのかなあ?」


にっこり。
実里が笑う。


それについては目覚めた後、綺音が教えてくれた。
私は綺音の策略によって、玉入れとそれから綱引きの補欠になったと聞いた。
運動が得意じゃない私のためにしれっとねじ込んでくれたらしい。
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