君の隣にいられたなら。
綺音は私の右手を取る。
そこにはお昼に貼った血の滲んだ絆創膏が。
もうキャパオーバーだと言わんばっかりの赤色に、綺音は顔を歪ませた。


「聞いた。茉白が何されてたのかも、夏葵が何したのかも」
「……」


少し、綺音は鈍いところがある。
中学の頃もそうだった。
私の様子の変化に気づかず、ふと、フラれたと思っているんだと思う。
当時は綺音も手一杯だったと思うし、それを責める気はない。


だけど、今回は違う。
綺音は少なからず、私をここで引き留めた前回から私の変化にもう気づいていたはず。
確かに、綺音の言葉を遮って走り去ったのは私だけど。



「でも、収集ついてない。まだ茉白は嫌がらせされてるわけじゃん。それなのにどうして」


まだ会いに行くんだと、聞きたそうだった。
聞く前に口をつぐんだのは、私が涙をポタリと流したからだと思う。


「綺音は、ずるいね」
「……っ、何が」
「私のこと全然わかんないくせに、先輩のこと悪く言うの、ずるいよ。先輩のこと、気に入らないだけでしょ?」


先輩は中学の頃、サッカー部だと聞いた。
綺音も、同じようにサッカー部だった。ソレ繋がりの縁だと言うことも。
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