君の隣にいられたなら。
机に突っ伏していたから、てっきり寝ていたのかと思ってしまった。
流石に口に出したのは失礼だよね。


慌てて謝った私に身体を起こして肘をつく。
下からじっと見つめられて、固まってしまった。


何か、変なものでもついてる?私の顔。


「こっちの校舎に来るなんて、珍しいね。1年生?」


口を開いた彼からは予想とは全く違うことが発せられた。


「はい」
「へぇ。勉強しにきたの?真面目だね」
「えっと、あなたは?」
「んー?静かだから寝に来てるの。」
「へぇ、じゃあ私、お邪魔ですよね。退散しますね」


正直、相手にとって第一印象悪くなっちゃったから気まずいし、帰りたい。
なのに、その本音を汲み取らずにっこり笑う目の前の人。


「んーん、いいよ。そこにいて?俺、鮎川夏葵って言うの。後輩ちゃん、お名前は?」
「……秋野茉白です」
「……へぇ」


鮎川夏葵、と名乗ったおそらく先輩は、少し驚いたような表情になり、でもすぐにさっきの柔らかい微笑みに変わった。


「秋野ちゃん、放課後勉強だなんて、真面目だね」
「真面目とかではないんですけど」
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