【掌編】日常の中の非日常〜あやかし編〜
鳥居
黄昏
陽炎のように揺らめいて見える遠くの空。
立ち寄ったコンビニで買った、お気に入りの黒蜜入りカフェオレ。
両手で持ちながら、舌を火傷しないようにちびちびと飲んだ。
『おいしいの?』
聞こえてきたのは小さい子どものような声。
見ると、子供の頃からお詣りしている神社の鳥居の柱に隠れるように小さい陰があった。
『いつも飲んでるそれ、おいしいの?』
もう一度聞かれた私は答えようか迷う。
だってその子の頭には角みたいなものがあったから。
黄昏時。
昔から魔物や災いに遭遇する時間と言われている。
そんな時刻に出会った小鬼。
きっと、無視すれば何事もなくいつもと同じ日々が繰り返される。
多分それが賢い生き方。
でも、でもさ。
ひねくれた私は賢い生き方なんて選びたく無い。
何より、コテンと首を傾げた小鬼はとても可愛くて。
だから、私は答えた。
「美味しいよ」
途端にパァッと笑顔になる小鬼に、私も笑顔になる。
『こっちにきて。もっとお話ししよう?』
「うん」
賢くない私は、誘われるままに鳥居をくぐる。
カミガミの領域へ、一歩踏み出した。
立ち寄ったコンビニで買った、お気に入りの黒蜜入りカフェオレ。
両手で持ちながら、舌を火傷しないようにちびちびと飲んだ。
『おいしいの?』
聞こえてきたのは小さい子どものような声。
見ると、子供の頃からお詣りしている神社の鳥居の柱に隠れるように小さい陰があった。
『いつも飲んでるそれ、おいしいの?』
もう一度聞かれた私は答えようか迷う。
だってその子の頭には角みたいなものがあったから。
黄昏時。
昔から魔物や災いに遭遇する時間と言われている。
そんな時刻に出会った小鬼。
きっと、無視すれば何事もなくいつもと同じ日々が繰り返される。
多分それが賢い生き方。
でも、でもさ。
ひねくれた私は賢い生き方なんて選びたく無い。
何より、コテンと首を傾げた小鬼はとても可愛くて。
だから、私は答えた。
「美味しいよ」
途端にパァッと笑顔になる小鬼に、私も笑顔になる。
『こっちにきて。もっとお話ししよう?』
「うん」
賢くない私は、誘われるままに鳥居をくぐる。
カミガミの領域へ、一歩踏み出した。
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