【掌編】日常の中の非日常〜あやかし編〜

大禍時

黄昏時。
誰そ彼時。

人の顔が見分けづらい時間帯。

そんな時には人ならざるものが辻を通るらしい。

逢魔が時。

それが転じて大禍時とも言う。

とても不吉な時間。


空の様子を見て私はマズいな、と思った。
(まつ)わり付くような空気も良くない。

こんな時は決まって悪いことが起こる。

陰陽師とか、霊媒師とか、そんな大層なものではないけれど。
色んなものが見えやすい(・・・・・)私は同時に巻き込まれやすい。
こんな時は逃げ場を探さないと……。

「あれ? こんなところに神社なんてあったっけ?」

記憶にはない場所にある、赤い鳥居。
石畳には、すでにいくつもの足跡。

誘われたのか、引き込まれたのか。

何にせよ、神社はカミの社。
守られている場所のはず。

纏わり付く空気はじっとりと重くなっているから、あまり時間もなさそうだ。
一拍だけ迷った私は、駆け込むように境界線を飛び越えた。
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