悪魔なあなたと結婚させてください!
おずおずとした声が聞こえてきて振り向くと、そこには影の薄い男性社員の姿があった。

彼は自分から積極的に発言するタイプでは無いはずだけれど、今は席を立っている。

「俺もずっとおかしいなって思ってました。この部署のミスはほとんどが佐藤さんのせいになってて。でも実際は違ってて、だから、その……」

途中からなにを言っていいのかわからなくなったのだろう、言葉はそのまましりすぼみになって消えていく。

男性社員は恥ずかしそうに座ってしまった。
だけど、だけどそれでよかった。

ちゃんと幸のことを見てくれていた人がいる。
おかしいと感じていて、それを発言してくれる人がいる。

それはこの会社で幸が孤独ではなかったということだ。
屋上に行けば明里だっている。

ジワリと胸の奥が熱くなって、それなすぐに涙となって視界をにじませてきた。

「ごめんなさい。ちょっとトイレに」

幸はそう言うと、涙を見せないように慌ててトイレに駆け込み、そして大きな声で泣き出したのだった。
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