悪魔なあなたと結婚させてください!
と、つぶやいた後、アレクには幸がなにをしていたか見ることができるのだと思い出した。

あれを見られていたのかと思うと恥ずかしくてやるせない気分になる。
「見ていたなら、どうして助けてくれなかったの」

トイレに閉じ込められているときにはサッと助けてくれたのに。
恨めしい視線をアレクへ向けると、冷めた視線を返された。

「あれくらいのことは自分でどうにかしろ」
そんな冷たいことを言われるとは思っていなくて傷がグリグリとえぐられる。

「私にとっては大切なものだったの!」
バレッタひとつ壊れたくらいでなにを泣いているのだと思われるかもしれない。

だけど幸にとっては特別なものだった。
するとアレクが呆れ顔のまま壊れたバレッタを手にした。

袋の中に入ったそれは無残にも砕け、もう使い物にはならないだろう。

アレクはそれを握りしめたかと思うと力づくでさらに粉々にしてしまったのだ。
「なにするの!?」
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