悪魔なあなたと結婚させてください!
慌てて止めに入るけれど、袋んの中のバレッタはすでに見る影もない。
金具部分も完全に歪んでしまっていた。

ジワリと涙が滲んでくる。
こんなことで泣きたくないと思うのに、悲しくて涙が頬を流れていく。

「俺はお前をダメにするためにこれをプレゼントしたわけじゃない」
アレクの冷たい言葉が振ってくる。

「お前は俺と結婚したいのであって、バレッタと結婚したいわけじゃないはずだ」
その言葉にハッとして顔を上げる。

アレクの表情はいつの間にか緩んでいて、幸を受け入れるような暖かさを持っていた。
「違う……けど……」

どうしてもショックが拭いきれなくて、バレッタを直視することができない。
「大丈夫。お前にはもっといいものを買ってやる。お前の努力次第でな」
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