悪魔なあなたと結婚させてください!
また泣いていたんじゃアレクに怒られてしまう。
呆れて、帰ってきてくれないかもしれない。

だけど止められない。
「ごめんねアレク。私もう復讐なんてしない。他人に嫌な思いなんてさせないからぁ」

泣きながら叫ぶ。
その声はやっぱり雨音にかき消されてしまう。

「私が間違ってたの。同じことをやり返したってなんの意味もなかった。また同じように嫌がらせをされるだけだって、わかってなかった」

冷たい雨に打たれながら空を見上げる。
アレクがどこからか自分を見ていないだろうかと期待して。

「だからぁ……戻ってきてぇ……」
膝から崩れ落ちてしまいそうになったとき、スッと黒い傘が差し出された。

幸の前で誰かが立ち止まる。
幸がパッと顔を上げたとき、そこにいたのは……アレクではなく、中川だった。
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