悪魔なあなたと結婚させてください！

ナイフ

「中川……さん」
ゴクリと唾を飲み込む。

中川はジッと幸を見下ろしていてその顔はほとんど無表情だった。

咄嗟に中川から身を話そうとした幸だけれど、開いている方の手で腕をしっかりと掴まれてしまった。

いくらトレーニングで鍛えていると言えど、相手は男。
筋力をつけるためのトレーニングをしていたわけでもないし、力ではかなうはずもない。

幸は中川に引き寄せられてそのまま狭い路地へと引き込まれていた。
一気にひと気がなくなり、中川の手から落下した傘が風でコロコロと転がっていく。

冷たい雨に濡れている中川の表情はさっきよりも冷たく感じられて幸の背筋に寒気が走る。

「な、なにか用事ですか？」
震える声で質問すると、ようやく中川の表情に変化が見えた。

だけどそれはあまりよくないものだとすぐに気がつく。
中川は眉間にシワを寄せてジッと幸を睨みつけてきたのだ。