悪魔なあなたと結婚させてください!
恐怖で喉が潰れたように、ヒュウヒュウという呼吸音しか出てこない。

大きな声を出せばもしかしたら誰かが助けにきてくれるかもしれない。

頭では理解しているが、実際にそうした行動に移せるのはほんのひとにぎりだけだ。

「許せねぇ……」
中川がスーツの内ポケットに手を入れた。

そして次ぎにその手が引き出されたとき、そこには小型のナイフが握りしめられていたのだ。

ギラリと光る切っ先に幸が「ヒッ」と小さく悲鳴を上げる。
雨に濡れるナイフの先端は幸の方へ向けられていた。

「その顔で二度と外を歩けねぇようにしてやる」
中川が目を血走らせて舌なめずりをする。

その目は本気だ。
きっと幸がなにを言っても聞き入れてはもらえないだろう。

「いや……やめて……」
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