悪魔なあなたと結婚させてください!
必死で中川の手を振りほどこうとするけれどうまくいかない。

体が大きかったころなら、体当りすれば逃げ出すことができたかもしれないが、今はそんなことをしても無駄だろう。

中川がまるで狩りを楽しむ肉食獣のようにジワジワとナイフを幸に近づけてくる。
その切っ先が幸の頬に触れてヒヤリとした冷たさを感じた。

「まずは頬を切って、それから鼻を削ぎ落として目玉をくりぬいてやる」
中川の脅し文句が脳内で再生される。

雨の中血まみれになって絶叫する自分の姿を想像して幸の頬に涙が流れる。
「ごめんなさい。もうバカにしたりしません。だから許して……」

「許さねぇって言っただろ!」
幸の言葉が中川を刺激し、頬に当たるナイフの感触が強くなる。

そのままナイフを下にスライドさせられれば、幸の皮膚は切り裂かれてしまうだろう。
幸はギュッと目を閉じて、口も引き結んだ。
< 200 / 207 >

この作品をシェア

pagetop