悪魔なあなたと結婚させてください!
なにを言っても許してくれないのなら、せめて一瞬で終わらせて。
そんな願いを込めて体に力を入れる。

しかし中川のナイフが幸の頬を切り裂くことはなく、そのままスッと離れていった。

さすがに断念したんだろうかと思って目を薄く開いてみると、そこには中川の腕を後ろへひねり上げているアレクの姿があったのだ。

「アレク!?」
驚いて声をあげたとき、中川が手からナイフを落とした。

カランッと音がして地面に落ちたナイフを、幸が咄嗟に握りしめた。
これでもう中川は幸を攻撃してくることはできない。

ホッとすると同時にまた涙が溢れてきてしまった。
が、今度は安堵の涙だ。

「警察を呼ぶ」
アレクは中川の腕をひねり上げたまま、静かな声でそう言ったのだった。
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