悪魔なあなたと結婚させてください!
アレクが吐き捨てるように言う。
それはそうと、どうして幸が帰宅したときにアレクがいなかったのか。

そっちの方が気になった。
「アレクはどこにいたの?」

「俺か? 俺は別の人間に呼ばれてでかけていたんだ。あいにく、悪魔の手が足りてなくてな」

「そんな。私の願いを叶えてないのに他の人に召喚されてたってこと?」
自分とアレクをつないでいるのはその召喚だけだ。

それなのに別の人間のところへ行ってしまうなんて、非常識じゃないだろうか。

何人もの人間をご主人にすることができるのだとしたら、アレクはいずれ自分の元からいなくなってしまう可能性だってある。

突然湧いてきた不安に一気に胸が締め付けられる。
「あぁ。でも簡単な願いだったからすぐに戻ってくることができ――」

途中まで説明したアレクは突然幸に抱きつかれて言葉を切った。
幸にしては珍しく、自分からアレクの体に両腕を回して痛いほどに抱きしめてくる。

「アレクがいないから、だから探しに出かけたの!」
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