悪魔なあなたと結婚させてください!
☆☆☆

たどり着いた先は見知らぬ路地だった。

あたりはすっかり暗くなっているし、都内とは思えないくらい低い民家が立ち並んでいる。

「え、ここどこ?」
むやみやらに走ってきたから、道なんて全然わからない。

だけど帰宅ときの人混みから抜け出せたことにはホッとしていた。
周囲に人の気配はないから、少なくても今は人の目を気にする必要もない。

「あぁ。疲れた」
普段運動なんてしないし、巨体を揺らして走ってきたのでさすがに疲れてしまった。

どこかで少し休憩しようと視線を巡らせていると、古書店と書かれた看板が見えた。

もう夜だから閉まっているかもしれないと思ったが、近づいてみると看板に明かりが灯っている。

本は好きだった。
マンガも小説も、現実ではない別の場所へ連れて行ってくれる。

それは幸の大好きな文具と同じで、現実逃避の材料になっていた。
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