悪魔なあなたと結婚させてください!
中川が仕事中にその手紙に気がつくことがなければ縁がなかったと思って諦める。
そう、決めて。

その日の業務はほとんど手につかなかった。
なにをしていても中川があの手紙を読んだかどうかが気になって仕方ない。

退社時間が近づくにつれて心臓がドキドキしてきて、何度も席を立ってトイレで化粧直しをした。

そして午後5時。
みんなが席を立って帰宅する中、幸は少し待ってから席を立った。

更衣室へは行かずに屋上へ向かう。
エレベーターはないので階段だ。

体が重たくて普段から階段は苦手だけれど、この日ばかりは別の意味で心臓がドキドキしていたから、疲れのためのドキドキなのか緊張のドキドキなのかよくわからなかった。

西日もあたることのない日陰になった屋上へ出ていくと、そこには中川の姿があった。
中川は幸が現れると『やぁ』と、笑顔を見せてくれた。
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