奴隷拷問が趣味の公爵令嬢を殺ってしまったので変身魔法で成りすますことにしました

【20】爺は邪魔しないらしい

「……うぅ」

 お腹いっぱい……食べ過ぎた。
 さすがは貴族、さすがは公爵家。朝から豪華すぎる食事を存分に堪能することができた。
 おかげさまでお腹がパンパンで……ドレスがキツイ。今すぐ寝間着に着替えたい。ダメかな? ……ダメだよね。

 レバスチャンやテイリー、侍女に見られながら一人黙々と食べるのは、ちょっと居心地が悪かったけど、美味しかったから気にしない気にしない。

 ところで、食事マナーは大丈夫だったのだろうか。
 特に指摘されることはなかったけど……。

「ねえ、レバスチャン。今日の予定を聞いてもいいかしら」

 朝食を取り終えたあと、さりげなく聞いてみた。
 もし、何かしら予定があるのであれば、アンとドゥを助けるのが遅くなってしまう。すると、

「昨日からお楽しみのことでしょう。そう心配せずとも、爺は邪魔しませんぞ」
「あー、……そう? それならいいんだけど」

 レバスチャンの言い方から察するに、昨日今日と二日続けて奴隷の拷問を楽しむつもりだったのだろう。

 レミーゼ、ホントに恐ろしい子……。

 でも、そのおかげで、あたしは今日一日を自由に動くことができる。
 拷問好きな公爵令嬢様に心から感謝だ。

「但し、くれぐれも目立たぬよう、十分にご注意ください。よいですな?」
「はいはい、分かっているわ」

 やり過ぎには注意と、レバスチャンから釘を刺される。
 心配してももう遅い。レミーゼは既にやり過ぎたあとだ。

 というわけで、まずは何をすべきか考えよう。
 って、今のあたしがやるべきことは一つしかない。

「テイリー、あたしは今から地下牢に行くから」
「地下牢に……ですか? もしや、もう奴隷を壊してしまったのでは……」

 替えの奴隷が欲しくなったと思われたのだろう。
 だから再び地下牢に足を運び、新しい奴隷を作る。それがテイリーの予想だ。

「ええ、そうよ。あの奴隷さ、小っちゃかったじゃない? だからすぐに動かなくなっちゃったのよね」

 嘘を吐く。
 実際に動かなくなったのはレミーゼの方なのだが、それはもちろん口にすることができない。あたしだけの秘密だ。

「なるほど、分かりました。じゃあ俺は……掃除でもしておきます」
「掃除? ええ、頼んだわね」
「はい!」

 一人で行動できるのは助かる。
 テイリーはレミーゼの直属兵なので、たとえどんなことがあろうとも、ほぼほぼ傍を離れることがない。推しと二人きりで居るのも悪くないけど、今はそんなことを言っている場合ではない。だからこれは千載一遇のチャンスだ。

 この隙に、アンとドゥを救い出してみせる。
 そしてあたしもレミーゼの姿からさよならしてやるんだ。

 このときのあたしは、まだ何も気付いていなかった。
 テイリーが言っていた掃除の意味を……。
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