奴隷拷問が趣味の公爵令嬢を殺ってしまったので変身魔法で成りすますことにしました
【21】神出鬼没な神隠し
地下牢に行ってアンとドゥを助ける前に、まずは自分が使える魔法の確認をすることにした。
もし、監守と一戦交えることになったら、使える魔法を知っておいた方がいいと思ったからだ。
今、この世界であたしが信じることができるのは、あたし自身。
だから自分の身は自分で守らなければならない。
というわけで、あたしが使える魔法をおさらいしておこう。
【ラビリンス】には、火・水・土・風・光・闇・そして無の七属性からなる魔法が存在する。
各属性に攻撃魔法や防御魔法、補助魔法、回復魔法、生活魔法など、多種多様な魔法がある。
その中でも、生活魔法が最も種類が多く、細かく別けられている。
魔法には発動が簡単なものから難しいものまで段階があって、入門・初級・初中級・中級・中上級・上級・禁忌・固有の八段階がある。
固有魔法は、選ばれたプレイヤーのみ発動可能な魔法のことだ。そのプレイヤーというのはβテスターのことで、一人に付き一つの固有魔法が存在する。
あたしの場合は【変身】が固有魔法に該当し、それに関しては他の誰も使用することができない。
つまり、あたしが誰一人にも【変身】の効果を教えたり披露したりしなければ、それがあること自体、誰も知ることができないのだ。
【ラビリンス】の専用掲示板では、βテスターの人が固有魔法で俺TUEEEして炎上しているのをよく見かけたものだけど、そういう人たちは固有魔法のネタが割れているので、あっという間に対策を取られてしまう。ハッキリ言って間抜けだ。
それじゃあ、あたしはというと、【変身】で姿形を変えているので、そもそも誰にも気付かれることがない。プレイヤーランキングで年間一位になったにもかかわらず、神出鬼没で誰もあたしの姿を見たことがないから、専用掲示板では【神隠し】なんて二つ名が付けられていた。
一応、独自に編み出した魔法も固有魔法に分類される。でもそれも初めのうちだけで、他の人がその魔法の発動に成功した瞬間から、それは固有魔法の定義から外れてしまう。
たとえそれでも、【ラビリンス】のプレイヤーたちは止まらない。新種の魔法を編み出すためにネット上で意見を交わし、常に研鑽していた。
固有魔法に続いて、禁忌魔法……。
これは入門から固有まで全段階に存在する魔法だ。
己の命を懸けて発動するものから、子供でも簡単に使えるものまで差が大きい。
【ラビリンス】の設定上、簡単に発動できるのに殺傷能力が高すぎて危険だからと、禁忌魔法に指定されたものも少なくない。
あたしも何種類か知っている。だけどこの世界ではさすがに使う気にはなれない。リターンよりもリスクが大きすぎるからだ。
では次に、魔法の使い方についてだけど……。
【ラビリンス】の中では、発動したい魔法の名前を口にする必要はあるけど、呪文を唱えるようなことはしなかった。
その代わりに、発動した魔法を脳内で創造しなければならない。その形が完成次第、魔法名前を口にして発動することができる。
魔法の名前に関しても、ファイヤーとかサンダーみたいな洋風な物ではなくて、【隷属】や【反射】のように、漢字の物がほとんどだ。それは【ラビリンス】が日本で作られたのが理由として挙げられるだろう。
対象となる魔法の創造が早ければ早いほど、即ち魔法の発動が早くなる。だから同じ魔法を使ったとしても、プレイヤーの腕によって発動速度に差が出る仕組みだ。
もちろん、速度だけが問題ではない。
発動した魔法の威力や精密性、成功確率にも影響が出てくる。
魔法の創造が苦手な人は、どんなに練習しても使えないなんてことがざらにある。
そんな人たちを救済するためだろうか、【ラビリンス】には魔法の杖があった。
たとえ魔法を創造するのが苦手でも、魔法の杖を媒介にすることで、創造を補ってくれるようになる。つまり、魔法を発動し易くなるのだ。
レミーゼの場合、魔法の扱いには長けているけど、それだけでは満足しなかったのだろう。杖を利用することで、通常よりも更に早く発動することができるようになっていたに違いない。
だからこそ、あたしはあのとき【稲妻】への対応が遅れてしまった。
レミーゼは光魔法の使い手で、【稲妻】はそれに分類される。
かたや、レミーゼの屋敷であたしが使った【反射】も、光魔法の一つだ。
この魔法はプレイヤー一人を対象として、術者に魔法を跳ね返す効果がある。
通常は、一回切りの使い捨て魔法なんだけど、あたしの場合は【永続】を付与していたので、自分の魔力が続く限り効果が切れることはない。
はっきり言って、魔法相手には最強格の防御魔法と言えるだろう。
もちろん、魔力が切れたら効果も無くなるし、発動中は魔力がモリモリ減っていくので、【永続】付与での発動には注意が必要だ。
【ラビリンス】では【反射/永続】の効果を過信し過ぎた結果、重要な場面で魔力が枯渇してしまってさようなら~みたいな展開も珍しくなかった。
実際、あたしも何度か経験している。
でも、この世界でそんな凡ミスをしたら一巻の終わりなので、十分気を引き締めておかなければならない。
「……何を使おうかな」
これまでに【反射】と【回復】、それと【変身】は使うことができたから、今度は他の魔法を試してみたい。
とはいえ、城内で攻撃魔法のような目立つものは使えないだろう。
たとすれば……やはり、生活魔法を試すのが一番だ。
「――【点火】」
ボソリと呟く。
すると、あたしが指定した箇所に、指先程度の火が点いた。
「お、おぉ~」
思わず声が出る。
あたし、ちゃんと魔法が使えるぞ。
【点火】は、火属性入門生活魔法の一つで、ライター程度の小さな火を点けることができる。攻撃魔法としては使えないけど、生活していくうえで非常に便利な魔法と言えるだろう。
あくまでVRMMOである【ラビリンス】とは違い、自分の力で本物の火を出した感じがするし、体の中から魔力が減ったのも感覚的に分かる。
改めて実感したけど、これがこの世界で魔法を使うということ……。
因みに、レミーゼの【稲妻】を跳ね返したときに【反射】の【永続】は解除しているので、あたしの魔力は減っていない。
【変身】は固有魔法の中でも【永続】が初めから付与されたものになるので、【永続】による魔力消費を気にする必要がないのが有り難かった。
……そういえば、【ラビリンス】ではステータスを見ることができたけど、この世界でも確認できるのだろうか。
「【鏡(メルア)】」
試しに【鏡】と呟いてみる。【ラビリンス】では、ステータス画面を開くとき、【鏡】と言えば開くことができた。
「……っ、よしよし、異常なし」
あたしの呼びかけに反応し、目の前にステータスが表示される。
どうやらこの世界でもチェックすることは可能のようだ。
とりあえず、現在の魔力がどの程度残っているのか確認しておこう。
「えーっと……んん?」
あたしは【鏡】でステータスを上から順に見ていく。
そして気付いた。
ステータス内に記された称号一覧に、この世界に来る前には無かったものが一つ増えていることに……。
「【転生/罪人】……?」
何だろう、この称号……。
……転生?
……罪人?
あたしが……罪人!?
もし、監守と一戦交えることになったら、使える魔法を知っておいた方がいいと思ったからだ。
今、この世界であたしが信じることができるのは、あたし自身。
だから自分の身は自分で守らなければならない。
というわけで、あたしが使える魔法をおさらいしておこう。
【ラビリンス】には、火・水・土・風・光・闇・そして無の七属性からなる魔法が存在する。
各属性に攻撃魔法や防御魔法、補助魔法、回復魔法、生活魔法など、多種多様な魔法がある。
その中でも、生活魔法が最も種類が多く、細かく別けられている。
魔法には発動が簡単なものから難しいものまで段階があって、入門・初級・初中級・中級・中上級・上級・禁忌・固有の八段階がある。
固有魔法は、選ばれたプレイヤーのみ発動可能な魔法のことだ。そのプレイヤーというのはβテスターのことで、一人に付き一つの固有魔法が存在する。
あたしの場合は【変身】が固有魔法に該当し、それに関しては他の誰も使用することができない。
つまり、あたしが誰一人にも【変身】の効果を教えたり披露したりしなければ、それがあること自体、誰も知ることができないのだ。
【ラビリンス】の専用掲示板では、βテスターの人が固有魔法で俺TUEEEして炎上しているのをよく見かけたものだけど、そういう人たちは固有魔法のネタが割れているので、あっという間に対策を取られてしまう。ハッキリ言って間抜けだ。
それじゃあ、あたしはというと、【変身】で姿形を変えているので、そもそも誰にも気付かれることがない。プレイヤーランキングで年間一位になったにもかかわらず、神出鬼没で誰もあたしの姿を見たことがないから、専用掲示板では【神隠し】なんて二つ名が付けられていた。
一応、独自に編み出した魔法も固有魔法に分類される。でもそれも初めのうちだけで、他の人がその魔法の発動に成功した瞬間から、それは固有魔法の定義から外れてしまう。
たとえそれでも、【ラビリンス】のプレイヤーたちは止まらない。新種の魔法を編み出すためにネット上で意見を交わし、常に研鑽していた。
固有魔法に続いて、禁忌魔法……。
これは入門から固有まで全段階に存在する魔法だ。
己の命を懸けて発動するものから、子供でも簡単に使えるものまで差が大きい。
【ラビリンス】の設定上、簡単に発動できるのに殺傷能力が高すぎて危険だからと、禁忌魔法に指定されたものも少なくない。
あたしも何種類か知っている。だけどこの世界ではさすがに使う気にはなれない。リターンよりもリスクが大きすぎるからだ。
では次に、魔法の使い方についてだけど……。
【ラビリンス】の中では、発動したい魔法の名前を口にする必要はあるけど、呪文を唱えるようなことはしなかった。
その代わりに、発動した魔法を脳内で創造しなければならない。その形が完成次第、魔法名前を口にして発動することができる。
魔法の名前に関しても、ファイヤーとかサンダーみたいな洋風な物ではなくて、【隷属】や【反射】のように、漢字の物がほとんどだ。それは【ラビリンス】が日本で作られたのが理由として挙げられるだろう。
対象となる魔法の創造が早ければ早いほど、即ち魔法の発動が早くなる。だから同じ魔法を使ったとしても、プレイヤーの腕によって発動速度に差が出る仕組みだ。
もちろん、速度だけが問題ではない。
発動した魔法の威力や精密性、成功確率にも影響が出てくる。
魔法の創造が苦手な人は、どんなに練習しても使えないなんてことがざらにある。
そんな人たちを救済するためだろうか、【ラビリンス】には魔法の杖があった。
たとえ魔法を創造するのが苦手でも、魔法の杖を媒介にすることで、創造を補ってくれるようになる。つまり、魔法を発動し易くなるのだ。
レミーゼの場合、魔法の扱いには長けているけど、それだけでは満足しなかったのだろう。杖を利用することで、通常よりも更に早く発動することができるようになっていたに違いない。
だからこそ、あたしはあのとき【稲妻】への対応が遅れてしまった。
レミーゼは光魔法の使い手で、【稲妻】はそれに分類される。
かたや、レミーゼの屋敷であたしが使った【反射】も、光魔法の一つだ。
この魔法はプレイヤー一人を対象として、術者に魔法を跳ね返す効果がある。
通常は、一回切りの使い捨て魔法なんだけど、あたしの場合は【永続】を付与していたので、自分の魔力が続く限り効果が切れることはない。
はっきり言って、魔法相手には最強格の防御魔法と言えるだろう。
もちろん、魔力が切れたら効果も無くなるし、発動中は魔力がモリモリ減っていくので、【永続】付与での発動には注意が必要だ。
【ラビリンス】では【反射/永続】の効果を過信し過ぎた結果、重要な場面で魔力が枯渇してしまってさようなら~みたいな展開も珍しくなかった。
実際、あたしも何度か経験している。
でも、この世界でそんな凡ミスをしたら一巻の終わりなので、十分気を引き締めておかなければならない。
「……何を使おうかな」
これまでに【反射】と【回復】、それと【変身】は使うことができたから、今度は他の魔法を試してみたい。
とはいえ、城内で攻撃魔法のような目立つものは使えないだろう。
たとすれば……やはり、生活魔法を試すのが一番だ。
「――【点火】」
ボソリと呟く。
すると、あたしが指定した箇所に、指先程度の火が点いた。
「お、おぉ~」
思わず声が出る。
あたし、ちゃんと魔法が使えるぞ。
【点火】は、火属性入門生活魔法の一つで、ライター程度の小さな火を点けることができる。攻撃魔法としては使えないけど、生活していくうえで非常に便利な魔法と言えるだろう。
あくまでVRMMOである【ラビリンス】とは違い、自分の力で本物の火を出した感じがするし、体の中から魔力が減ったのも感覚的に分かる。
改めて実感したけど、これがこの世界で魔法を使うということ……。
因みに、レミーゼの【稲妻】を跳ね返したときに【反射】の【永続】は解除しているので、あたしの魔力は減っていない。
【変身】は固有魔法の中でも【永続】が初めから付与されたものになるので、【永続】による魔力消費を気にする必要がないのが有り難かった。
……そういえば、【ラビリンス】ではステータスを見ることができたけど、この世界でも確認できるのだろうか。
「【鏡(メルア)】」
試しに【鏡】と呟いてみる。【ラビリンス】では、ステータス画面を開くとき、【鏡】と言えば開くことができた。
「……っ、よしよし、異常なし」
あたしの呼びかけに反応し、目の前にステータスが表示される。
どうやらこの世界でもチェックすることは可能のようだ。
とりあえず、現在の魔力がどの程度残っているのか確認しておこう。
「えーっと……んん?」
あたしは【鏡】でステータスを上から順に見ていく。
そして気付いた。
ステータス内に記された称号一覧に、この世界に来る前には無かったものが一つ増えていることに……。
「【転生/罪人】……?」
何だろう、この称号……。
……転生?
……罪人?
あたしが……罪人!?