奴隷拷問が趣味の公爵令嬢を殺ってしまったので変身魔法で成りすますことにしました
【45】眠りたい。けど耳に届く戦闘音
フレアを見送ったあと、あたしはゆっくり骨休めすることが……できなかった。
聖女様のお持て成しは、明日もある。お風呂は一応入ったことだし、屋敷に戻ってふかふかのベッドで寝ようと思っていたら、レバスチャンに首根っこ掴まれてしまったのだ。
アルバータの行方が分からない今、その代役を務めなければならない。
その結果、延々と雑務処理に追われている。
「はぁ、疲れた~」
グッと背伸びをする。
自業自得とはいえ、これ絶対に日を跨いでいるよね。時計見てないけど体感で分かるから。
「レバスチャン? ねえ、居ないの?」
返事がない。
「……よしっ」
レバスチャンの姿も見えなくなったことだし、そろそろ逃げ出してもいい頃合いだろう。
とりあえず、屋敷に戻る前に、やっぱりもう一度お風呂にでも入ろうか。
あの空間は天国だったし、今なら侍女に揉みくちゃにされることなく、こっそりと入浴することができそうだ。
とか考えていると、テイリーを発見。
「テイリー? 今までどこに行っていたの?」
「……すみません」
やっぱりまだ思いつめたような顔をしている。
どこに行っていたのか訊ねても、謝るだけで何も答えようとしない。
あたしが演説をしたりフレアを持て成したりしている間、直属兵のテイリーは何をしていたのか気になるところではあるけど、この調子では答えてくれないだろう。
ふう、とため息を一つ。
お風呂に入るのは、明朝に延期だ。テイリーを待たせるのも気まずいからね。
「屋敷に戻ろうかしら」
「はい……」
残った雑務を放棄して、あたしは部屋を出る。
屋敷までの道のりを、テイリーを引き連れて歩いた。
実のところ、テイリーが話しかけてくるとボロが出そうなので、このまま黙っていてくれた方があたしとしてはありがたい。
だけどやっぱり気になるものは仕方ない。
推しの困ったような表情を見ていると、どうにかして笑顔にしてあげたいと思ってしまう。
そんな風に思考を巡らせながらも、あたしはテイリーと一緒に屋敷へと戻った。
「それじゃあ、護衛は任せたわね」
「……はい」
「おやすみなさい、テイリー」
「……はい」
はいしか言わないテイリーに声をかけ、あたしは屋敷の中に入る。
明日になれば、テイリーの様子も変わっているかもしれない。だからいちいち気にするのは止めておこう。
「さーて、あのベッドでぐっすり寝ようかな~」
明日に備えて、しっかりと眠っておきたいところだ。
屋敷内を歩いて、ベッドの置かれた寝室に向かう。とここで、あたしは地下室の扉が目に入った。
「……開いてる」
地下室の扉が開いている。
あたし、開けてたっけ?
「……?」
多分、閉め忘れたのだろう。
あたしは地下室の扉を閉める。
この屋敷には、死体が二つある。
そんなところで眠ろうだなんて、よくよく考えれば異常極まりないことだ。
でも、あたしが安心できる場所と言ったら、この世界では今のところここしかない。
時が経てば経つほど、色々と厄介なことになりそうだけど、地下室のことは忘れよう。とにかく、フレアの聖地巡礼を無事に乗り切ることだけを考えるんだ。
寝支度を済ませた。あとはベッドに寝転がるだけ。
と、ちょうどそのときだった。
「っ、この音は……」
魔法と魔法がぶつかり合うような音が、屋敷に響く。
レミーゼの屋敷には全体防御魔法がかけられているので、音や衝撃は吸収されるはずだ。それでも響くということは、相当な大きさということになる。
慌てて屋敷の外に出てみると、そこにはテイリーともう一人……。
「サイダール!?」
フレアのお供をしていた元プレイヤーのサイダールの姿があった。
聖女様のお持て成しは、明日もある。お風呂は一応入ったことだし、屋敷に戻ってふかふかのベッドで寝ようと思っていたら、レバスチャンに首根っこ掴まれてしまったのだ。
アルバータの行方が分からない今、その代役を務めなければならない。
その結果、延々と雑務処理に追われている。
「はぁ、疲れた~」
グッと背伸びをする。
自業自得とはいえ、これ絶対に日を跨いでいるよね。時計見てないけど体感で分かるから。
「レバスチャン? ねえ、居ないの?」
返事がない。
「……よしっ」
レバスチャンの姿も見えなくなったことだし、そろそろ逃げ出してもいい頃合いだろう。
とりあえず、屋敷に戻る前に、やっぱりもう一度お風呂にでも入ろうか。
あの空間は天国だったし、今なら侍女に揉みくちゃにされることなく、こっそりと入浴することができそうだ。
とか考えていると、テイリーを発見。
「テイリー? 今までどこに行っていたの?」
「……すみません」
やっぱりまだ思いつめたような顔をしている。
どこに行っていたのか訊ねても、謝るだけで何も答えようとしない。
あたしが演説をしたりフレアを持て成したりしている間、直属兵のテイリーは何をしていたのか気になるところではあるけど、この調子では答えてくれないだろう。
ふう、とため息を一つ。
お風呂に入るのは、明朝に延期だ。テイリーを待たせるのも気まずいからね。
「屋敷に戻ろうかしら」
「はい……」
残った雑務を放棄して、あたしは部屋を出る。
屋敷までの道のりを、テイリーを引き連れて歩いた。
実のところ、テイリーが話しかけてくるとボロが出そうなので、このまま黙っていてくれた方があたしとしてはありがたい。
だけどやっぱり気になるものは仕方ない。
推しの困ったような表情を見ていると、どうにかして笑顔にしてあげたいと思ってしまう。
そんな風に思考を巡らせながらも、あたしはテイリーと一緒に屋敷へと戻った。
「それじゃあ、護衛は任せたわね」
「……はい」
「おやすみなさい、テイリー」
「……はい」
はいしか言わないテイリーに声をかけ、あたしは屋敷の中に入る。
明日になれば、テイリーの様子も変わっているかもしれない。だからいちいち気にするのは止めておこう。
「さーて、あのベッドでぐっすり寝ようかな~」
明日に備えて、しっかりと眠っておきたいところだ。
屋敷内を歩いて、ベッドの置かれた寝室に向かう。とここで、あたしは地下室の扉が目に入った。
「……開いてる」
地下室の扉が開いている。
あたし、開けてたっけ?
「……?」
多分、閉め忘れたのだろう。
あたしは地下室の扉を閉める。
この屋敷には、死体が二つある。
そんなところで眠ろうだなんて、よくよく考えれば異常極まりないことだ。
でも、あたしが安心できる場所と言ったら、この世界では今のところここしかない。
時が経てば経つほど、色々と厄介なことになりそうだけど、地下室のことは忘れよう。とにかく、フレアの聖地巡礼を無事に乗り切ることだけを考えるんだ。
寝支度を済ませた。あとはベッドに寝転がるだけ。
と、ちょうどそのときだった。
「っ、この音は……」
魔法と魔法がぶつかり合うような音が、屋敷に響く。
レミーゼの屋敷には全体防御魔法がかけられているので、音や衝撃は吸収されるはずだ。それでも響くということは、相当な大きさということになる。
慌てて屋敷の外に出てみると、そこにはテイリーともう一人……。
「サイダール!?」
フレアのお供をしていた元プレイヤーのサイダールの姿があった。