奴隷拷問が趣味の公爵令嬢を殺ってしまったので変身魔法で成りすますことにしました
【54】年間一位
「何日間続いたとか、正直長すぎて覚えてないのよね……だから分かりやすく言うけど、年間ランキングで一位になったことはあるわ」
「ね、年間一位だと!? ふ……ふざけたことを抜かすな! それはいったい何の冗談だ!」
「冗談じゃないけど」
「ならば嘘か!」
どうしても冗談か嘘だと思いたいらしい。
サイダールは肩を震わせている。
「まあ、証明のしようがないし、嘘だと思うならそれでもいいわ」
「っ! そうだ、ほらな! 嘘に決まっている! この大噓付きがっ!」
「でも、少なくともあんたより強いと思うよ?」
「戯言も大概にしろ!!」
遂にサイダールが発狂する。
あたしの方が強いと言ったことで、琴線に触れてしまったのだろう。
「年間一位……! それを証明もできない愚か者風情が、この俺様よりも強いとほざくのか!」
「そう言われても、この世界で証明することなんてできないし……あ! それじゃあ、あたしのプレイヤー名なら知ってるかな」
良案だ。
あたしは【ラビリンス】で使用していたプレイヤー名をサイダールに教える。
すると、再度サイダールの顔色が変わる。
「……いや、違う。違う。嘘だ。それも嘘だ。貴様が奴の名を騙っているだけだ……そう、そうだ。そうに違いない」
サイダールの言い分も一理ある。名前を騙るだけなら自由だし。
とはいえ、ここまでやってもこの状態ってことは、サイダールは何を言っても初めから信じるつもりがないのだろう。つまり、この押し問答は無意味ってことだ。
「はあ……もういいよ。証明できないってことで」
「ふ、ふははははっ! ようやく認めたか! そうだ、貴様はただの一プレイヤーに過ぎないのだ! この俺様とは格が違うのだ!」
相手をするのも面倒くさいから、さっさと倒してフレアの拘束を解かないとね。
「……いや待て、ただの一プレイヤーにしては、おかしな点があるのを忘れていた」
とここで、サイダールが疑問を口にする。
「貴様は何故……レミーゼなのだ?」
眉を潜め、あたしの姿を観察する。
どこからどう見てもレミーゼ・ローテルハルクなのに、【ラビリンス】のプレイヤーであるあたしのことを、じっくりと……。
「貴様……まさか、転生先がレミーゼだったのか?」
「……黙秘権使います」
視線を逸らす。
けどすぐに戻した。元プレイヤーを相手に隙を見せるわけにはいかないからね。
「正直に答えろ!」
フレアの前で、あんまり詮索しないで欲しいんだけど、残念ながらサイダールは止まらない。
「この世界に来てからというも、俺様は他のプレイヤーと何度か遭遇したことがあったが、どいつもこいつも【ラビリンス】の初期アバターの姿をしていたぞ! だというのに、何故貴様はレミーゼなのだ! どう考えてもレミーゼに転生したとしか思えん!」
「……他のプレイヤー?」
サイダールの台詞に、あたしは目を開いた。
まさか、あたしやサイダールの他にも【ラビリンス】のプレイヤーが居るのか……それも一人や二人じゃなくて、もっとたくさん……。
「……ハッ!? ……分かった、分かったぞ! ……貴様ッ! レミーゼに転生したのではなく、成り済ましているのだな!!」
うっ、核心を突いてきた。
間抜けだと思っていたけど、思いのほか早く答えに辿り着いたようだ。
「間違いない! 俺様は目にしたことがあるぞ! アレは確か【ラビリンス】の専用掲示板のコメントをチェックしていたときだ! βテスターの固有魔法で、自由自在に姿形を変えることのできる者が……居るかもしれない、と……、……あ?」
そこまで言ったところで、サイダールは気付いた。
「た……確か、年間一位は……神出鬼没で、神隠しのような存在だと言われていて……本当の姿を見た者は、誰も居ない……それは固有魔法で姿形を変えることができるから……あ、あぁ……あああ……、ま、まさか、貴様が……あの【神隠し】だというのか……!?」
やっと、理解できたらしい。
あたしが年間ランキング一位の【神隠し】であることを……。
「ね、年間一位だと!? ふ……ふざけたことを抜かすな! それはいったい何の冗談だ!」
「冗談じゃないけど」
「ならば嘘か!」
どうしても冗談か嘘だと思いたいらしい。
サイダールは肩を震わせている。
「まあ、証明のしようがないし、嘘だと思うならそれでもいいわ」
「っ! そうだ、ほらな! 嘘に決まっている! この大噓付きがっ!」
「でも、少なくともあんたより強いと思うよ?」
「戯言も大概にしろ!!」
遂にサイダールが発狂する。
あたしの方が強いと言ったことで、琴線に触れてしまったのだろう。
「年間一位……! それを証明もできない愚か者風情が、この俺様よりも強いとほざくのか!」
「そう言われても、この世界で証明することなんてできないし……あ! それじゃあ、あたしのプレイヤー名なら知ってるかな」
良案だ。
あたしは【ラビリンス】で使用していたプレイヤー名をサイダールに教える。
すると、再度サイダールの顔色が変わる。
「……いや、違う。違う。嘘だ。それも嘘だ。貴様が奴の名を騙っているだけだ……そう、そうだ。そうに違いない」
サイダールの言い分も一理ある。名前を騙るだけなら自由だし。
とはいえ、ここまでやってもこの状態ってことは、サイダールは何を言っても初めから信じるつもりがないのだろう。つまり、この押し問答は無意味ってことだ。
「はあ……もういいよ。証明できないってことで」
「ふ、ふははははっ! ようやく認めたか! そうだ、貴様はただの一プレイヤーに過ぎないのだ! この俺様とは格が違うのだ!」
相手をするのも面倒くさいから、さっさと倒してフレアの拘束を解かないとね。
「……いや待て、ただの一プレイヤーにしては、おかしな点があるのを忘れていた」
とここで、サイダールが疑問を口にする。
「貴様は何故……レミーゼなのだ?」
眉を潜め、あたしの姿を観察する。
どこからどう見てもレミーゼ・ローテルハルクなのに、【ラビリンス】のプレイヤーであるあたしのことを、じっくりと……。
「貴様……まさか、転生先がレミーゼだったのか?」
「……黙秘権使います」
視線を逸らす。
けどすぐに戻した。元プレイヤーを相手に隙を見せるわけにはいかないからね。
「正直に答えろ!」
フレアの前で、あんまり詮索しないで欲しいんだけど、残念ながらサイダールは止まらない。
「この世界に来てからというも、俺様は他のプレイヤーと何度か遭遇したことがあったが、どいつもこいつも【ラビリンス】の初期アバターの姿をしていたぞ! だというのに、何故貴様はレミーゼなのだ! どう考えてもレミーゼに転生したとしか思えん!」
「……他のプレイヤー?」
サイダールの台詞に、あたしは目を開いた。
まさか、あたしやサイダールの他にも【ラビリンス】のプレイヤーが居るのか……それも一人や二人じゃなくて、もっとたくさん……。
「……ハッ!? ……分かった、分かったぞ! ……貴様ッ! レミーゼに転生したのではなく、成り済ましているのだな!!」
うっ、核心を突いてきた。
間抜けだと思っていたけど、思いのほか早く答えに辿り着いたようだ。
「間違いない! 俺様は目にしたことがあるぞ! アレは確か【ラビリンス】の専用掲示板のコメントをチェックしていたときだ! βテスターの固有魔法で、自由自在に姿形を変えることのできる者が……居るかもしれない、と……、……あ?」
そこまで言ったところで、サイダールは気付いた。
「た……確か、年間一位は……神出鬼没で、神隠しのような存在だと言われていて……本当の姿を見た者は、誰も居ない……それは固有魔法で姿形を変えることができるから……あ、あぁ……あああ……、ま、まさか、貴様が……あの【神隠し】だというのか……!?」
やっと、理解できたらしい。
あたしが年間ランキング一位の【神隠し】であることを……。