何があってもどこにいても、僕は君だけを愛してる
誘惑と破滅
鎌倉の自宅に着くと、遼はふらふらとベッドに倒れ込んだ。

よくよく考えてみたら、前日の晩は徹夜で制作に没頭していたので一睡もしていなかった。一晩眠らなかっただけで言うことをきかなくなる体に、四十六歳という年齢を痛いほど感じる。

翌朝、そのまま眠ってしまった遼は目を覚ますとまっすぐに風呂場へ向かった。べたつく汗とともに昨日の記憶も洗い流してしまおうと熱い湯を勢いよく浴びる。

身体を流していると、どんどんどん、と玄関のドアを叩く音がした。その激しさに尋常ではないものを感じて遼はシャワーを止めた。

「先生!開けて」

柚香の切羽詰まった様子の声だった。

「助けて!助けて」

何事かと思い遼はバスローブを体に巻き付けて玄関扉を開けた。

「どうした?」

「びっくりした?」
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