何があってもどこにいても、僕は君だけを愛してる
二人が交わし合う視線、言葉の端々から、遼は二人が男女の関係にあることを悟った。

以前この場所で体を貪りあった相手と現在の愛人を並べて、よくも平然としていられるものだと感心し、女というのは怖い生き物だと、柚香に叩かれた頬を撫でながら思った。


「彼は今、ヴァーチャルギャラリーの創設のために動いているの。クラウドファンディングでの資金繰りもあと一歩なんだけど、企画にもう少しインパクトが必要だって悩んでいて。遼の作品がもしヴァーチャルギャラリーに加われば、話題性も上がると思うの。ひとつ、協力してもらえないかしら」

ひろ子は高飛車な態度でありながらも、親し気な物言いで言った。

「ひろ子さんからの頼みなら、僕は喜んで引き受けるよ」

遼は彼女が欲しいであろう言葉を返した。少し彼女にすがるような、未練を引きずるようなニュアンスを込めて。

< 38 / 70 >

この作品をシェア

pagetop