何があってもどこにいても、僕は君だけを愛してる
ドアを開けると、花が台所で焼きあがったデニッシュをオーブンから取り出しているところだった。


ふいに、ここは僕たちの家だ、と感じた。


一人で寝起きしているときにはおこらなかった感情だった。絵を描き、疲れたら眠る、ただそれを繰り返すだけの場所にすぎなかったこの古家が今、花の放つ温かい空気で満たされている。


キッチンに置かれたテーブルの上に、真ん中がくぼんだパイに似たパンが並んでいて、隣には黄色いクリームがたっぷりと入った大きなボウルがある。


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