腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「谷口先生」


「ひっ!さ、向坂……ま、まだあるのか……?」


「いえ……ただ、もし俺達を裏切ったら…"それ相応の事"、があると思ってくださいね」



口角を無理に上げて不自然に笑って見せる向坂君に谷口は怯えたようにコクコクと頷くと、逃げるようにしてこの場を去っていった。



「あそこまで脅さなくても、谷口先生は俺達の事を言わないだろう?」


「どうかな。見回りだなんて嘘ついてたら勘繰りたくもなるさ」


「え?な、なんで嘘だって思うの?」


「見回りにしては時間が早すぎるし、何より今日は、生徒会の講演会のリハーサルがあるからね。顧問の谷口が行かない訳がない」


「じゃあなんだ?谷口先生はわざわざ俺達に嘘をついていたって言いたいのか?」


「そうだって。なんで誤魔化したかは知らないけど、念には念をだよ。釘をさしておけば、下手な事も言えないだろう」



抜かりのない向坂君に素直に感心してる慎君。

……にしても、慎君ってなんでここに来たんだろう。
ここに来るまで向坂君は何度も周りを確認したし、実際足音なんて聞こえて来なかった。

こんな所に用事がある事なんて滅多にないだろうに、どうやって私達が話していることに気づいたのか。

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