腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「…………まだ居たのか」
真っ黒の高級そうな傘をさして隼瀬君はなんとも言えない表情でそこに立っていた。
「やっぱり会って話したいなぁって思って粘ってたんだよ。良かったぁ、出てきてくれて……」
「……俺はお前とここで話すつもりはない」
「えっ、じゃあ、やっぱり今日は大人しく帰らないと駄目かな……?」
「違う……ここだと風邪を引くだろ」
いまいち真意が掴めないので、大人しく彼の言葉を待っていると、隼瀬君は少し言いにくそうに口を開いた。
「……そんなに話したいなら俺の家で話せ。嫌なら今すぐ帰るんだな」
「えっ!?!?い、家の中!?良いの!?」
「嫌なら帰れ」
まさかあんな豪邸の中に入れて貰えると思わなかったのでめちゃくちゃに取り乱してしまった。
しかし、こんな機会は滅多に無いので頭をブンブンと横に振って喜んだ。
「入らせていただきます!」
「相変わらずうるさい奴だな。着いてこい」
そう言って隼瀬君は踵を返すと、重そうな鉄の扉をゆっくりと開いて、私が入るのを待ってくれた。