腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あ、ありがとう」


「……こっちだ」



鉄の扉の向こう側は見たことが無かったけど、中世のヨーロッパのような庭園が私を出迎えてくれた。
庭だけでも相当な広さがあるけど、豪邸は近くで見るとかなりの大きさだ。


「す、凄いなぁ……こんなに大きな庭見たことない……」


「黒北が季節の花を植えてくれるんだ。あそこにあるのが睡蓮、ダリア、ラベンダー……向こうの池には蓮の花もある」


へぇ、と思わず感嘆な声を上げる。

黒北って言うのはあの感じの悪い美人のメイドの事だろうか。

しばらく庭園を歩いていると、大きな門に着く。

隼瀬君が何やらパスワードを打っていると、カチャリと玄関が開く音が聞こえた。



「さぁ、中に入るぞ」


「あ、は、はい」



重厚な扉が開かれるのはなんだか緊張して、ぎこちない様子で隼瀬君の後ろを着いていく。

中に入ると、いつものメイドの女性が神妙な面持ちで私達を出迎えた。



「雅様……その者を出迎えるだけなら、この黒北を使ってくだされば……」


「良い、俺が自分で呼ぶことを決めたんだ。それより、温かい飲み物を用意しておけ。二人分だ」


「……かしこまりました」



メイド……黒北さんは、私達に一礼し、何個もある扉の内の一つに入って行った。

しかし、黒北さんは私の事を全く歓迎してないように見える。言葉の節々にトゲがあるような。



「ねぇ隼瀬君」


「なんだよ?」


「もしかして私、黒北さんに嫌われてたりしない?本当に入って平気だった?」


「何言ってんだお前……黒北に嫌われてようがいまいが、俺が入れていいと言ったら入っていいに決まってるだろ」



当然と言うように、隼瀬君は少し呆れたように話した。
まぁ確かに冷静に考えたらそうかもしれない。ここは隼瀬君の家なんだし。

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