腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「……出来たとしても、俺はそいつを幸せに出来ないだろ。俺と親しくなった奴は不幸になるんだから」
隼瀬君は目を伏せながら少し言いづらそうに言葉を紡いだ。
……慎遥香について聞くチャンスかもしれない。
彼の機嫌を損なわないように、慎重に言葉を選ぶ。
「……その話、もう少し詳しく聞きたいんだけど……無理かな?」
「どうして?」
「知りたいから……?それに、私も無関係じゃないし」
「お前は関係ないだろ」
「関係あるよ、友達じゃないか」
家まで入れておいて今更仲良くもない赤の他人はちょっと無理があると思うよ。
私の言葉に目を見開くと、頬を赤くしてジトっとした目で私を見てきた。
照れてるんだろうか。
「……俺とお前が釣り合うとでも?」
「そんな悲観的になる事はないよ!隼瀬君にだって良い所ぐらいあるよ!」
「違う逆だ!お前が俺に釣り合ってないって話をしてるんだよ…」
「あ、そう…」
「……本当はお前なんかに俺の話なんてしたくなかった。でも、お前の能天気さに気が変わった」
そう言うと、隼瀬君はゆっくりと私の目を見つめた。
美しく澄み切った瞳は、向坂君と似てるようで似てないのかもしれない。
「……小学校の時は普通だったんだ。仲の良い友達だって居たし、今みたいに不登校になってたりしてなかった」
「じゃあ、日記に書いてた通り中学からおかしくなったってこと?」
「そうだ。正確な日は覚えてないけど、二年生になってからだったと思う。俺の周りの人間が虐められたり、不良に絡まれてリンチに合ったり……一番酷かったのが、女子の友達だった。言うのもはばかられる……本当に惨い事をされて自殺未遂をした奴だって居たんだからな」
「な、なにそれ……」
もしこれが立花の仕業なら、なぜここまでの事をするんだろう。
普通じゃない。どこまで狂気的な男なんだろうか、立花は。