腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「だから、中学の後半から学校には行かなくなった。周りの人間を不幸にするから仕方ないって必死に自分を正当化してたけど、俺は逃げたんだ。本当に独りになる前に…」
「……こう聞くのもなんだけど、なにか思い当たる事はない?」
「ここまでの事をされるほど恨まれた記憶は俺には無いな。でも、暇つぶしで人の人生を狂わせる奴はどこにでも居るもんだよ」
(違う、立花は暇つぶしでそんな事をする人間じゃない)
立花は、狡猾で自分の毒となる者には容赦なく残酷なことが出来る。
そんな人間だと思うんだ。
「でも、そんな酷い事をされても高一の最初は来てたんでしょう?」
「来てたさ。高校に行ったら、あんな事は無くなると思ってたからな。まぁ、そんな事は全然無かったんだけど」
「慎遥香とはどういう仲だったの?」
"慎遥香"
その名前を出した瞬間、隼瀬君はバンっとテーブルを叩き、身を乗り出して私を睨みつけた。
「なんで彼女のことを知ってるんだ!」
「きょ、去年のあの事故は有名だったし、それで……」
「じゃあなぜ彼女と俺が関係があることが分かったんだ?俺は高校の話は一切してないはずだ」
先程の雰囲気とは一転し、ピリピリとした空気感が部屋中を包んでいる。
不味い。変に言い訳をすると、それこそボロが出てしまいそうだ。