腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
連れてこられたのは中庭のベンチだ。

わざわざ向坂君と倉木さんが良い感じの雰囲気で寄り添ってた所に私を連れてくるなんて、相変わらず嫌味な子だなぁと思う。

持ってきたサンドイッチを食べながら倉木さんの様子を伺う。



「この前、谷口先生が私に教えてくれたの」


「へ?な、なにを?」


「"向坂は御影の彼女の和泉と付き合っている"って……」


「……え"っ」


「私、遊ばれてるのかな?向坂君からしたら、私はただのつまらない女なの?」



薄く笑みを浮かべながら話す彼女に、なんて言葉をかけたらいいか分からない。

私は既に和泉さんと関わりがあると言う話を向坂君本人から聞いていたからそこまで驚きはないけど、倉木さんは知らなかったのだろう。


(にしても"付き合ってる"かぁ…)


谷口がそう見えるほど、和泉さんと接触があったなんて知らなかった。


「あ、遊ばれてるとは限らないんじゃ…」


「貴女だってそうでしょう?向坂君に良いように利用されてるだけじゃない」


「はぁっ!?な、なんて事を…!!」



こっちが気の利いたセリフを考えてやっているのに、なんて言い様だ。

私が利用されてると言うのなら、よっぽど倉木さんの方が半端な扱いを受けていると思う。

私は一応付き合ってるという立場だけど、彼女はその称号すらないんだから。


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