腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「そんな言い方ないじゃん!」


「私は向坂君に言われたの。"倉木さんが俺の傍に居てくれたら良いのに"って。貴方は言われた事ある?」


「なっ……」


「無いでしょう?そうだよね、貴女は学校で向坂君と話さないもんね。私よりも関係が薄いもの」



何が言いたいんだろう。

向坂君との関係性についてマウントを取っているつもりなのか?



「……それを聞いて何がしたいの?私にマウントを取りたいだけ?」


「そうよ。そうじゃないと、私は自分の存在価値が分からないもの」


「存在価値?」


「だってそうじゃない。なら、私は、なんの為に谷口先生にあんな事したの?最終的に私と向坂君が結ばれると思ったからよ。なのに、なんで和泉さんみたいな品のない女に取られなきゃいけないの」



彼女は忌々しいと言うように拳をギュッと握り、舌で唇を舐めた。

なんて答えたら良いんだろう。

彼女の為を思うなら、本当の事を教えてあげた方が良いと思うけど……
でも、そうすると、向坂君の復讐に支障がきたすかもしれない。

どうにか当たり障りない事を言わなければ。



「えっと……向坂君は、その……立花の悪を許せないと思ってるんだよ。だから……それを探るために和泉さんに近づいてるんだと思う」


「でも自分の家にまで入れてたりしたのよ?情報を聞く為だけにそんな事する?」


「い、家!?」



それは聞き捨てならない。
だって彼女の私ですら入ったことないのに、なんで和泉さんなんかを家に入れたりしたの??

いくら情報が欲しいからってやりすぎだよ。

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