腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「キャーッ!!」


周りの人達は悲鳴を上げ、私は状況を整理出来ないで、ただ地面にしゃがみ込んでいた。



「いってぇ……っ」


「……ぁ、さっ、佐原君!!」



私の近くで呻き声が聞こえ、慌ててそっちの方向を向くと、佐原君の腕にガラスの破片が深々と突き刺さっているのが見えた。

動悸が、一気に早くなるのが分かる。



「あっ!あ、ほ、ほけんしつっ…!、えっ、いや、救急しゃ…、」


「……痛てぇなゴラァ!!誰だ窓ガラス割ったやつ!!!殺すぞ!!!」



挙動不審になりながらも佐原君の傍に近付くと、佐原君はスッ、と立ち上がり窓の外に向かって怒号を飛ばしていた。

私も急いで窓の外を見ると、数人の生徒がグラウンドから走って逃げていくのが見えた。



「逃げんじゃねえ!!今からそっち行くから待ってろ!!」


「ほほほほほ、ほっ保健室!!保健室が先だよ!!佐原君!!」


「うるせえ!こんな怪我なんてことねーよ!」


「駄目だって!!保健室行ってからじゃないと絶対駄目だよ!!」



必死に訴える私に、佐原君は驚いたように目を見張っている。

彼の腕はガラスが刺さって血がポタポタと腕から流れ落ちている。
明らかに傷が深いのは素人からでも見て取れる。



「なんだよお前……心配性だなぁ。別にそんな大した怪我じゃねーって」


「大した怪我だよ!と、とりあえず止血しないと…!!」



腕に刺さったガラスを抜こうとする佐原君を必死に抑えて保健室に向かうことにした。

ガラスの破片が散らばった床に、テニスボールぐらいのサイズの石が落ちているのをしっかりと確認して…
< 125 / 164 >

この作品をシェア

pagetop