腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
谷口が保健室のドアをピシャリと閉め、私と佐原君の二人だけが残される。



「なんだ、お前も怪我してんのか?」


「いや、私はしてないけど……」


「ふーん、運がいいな。怪我してないなら教室に戻れば良かったのに」


「………」



気の利いた言葉が返せたら良かったけど、今の私にはなにも思い浮かばなかった。
黙り込んだ私を見て、佐原君は珍しく困ったような顔をした。



「なんだよ。そんなに落ち込むことないだろ?ただちょっと怪我しただけじゃんか」


「……私のせいかもしれない、と思って……」


「はぁ?なに意味分からんキモい事考えてんの?お前のせいな訳あるもんか!石投げた奴が悪いに決まってんだろ!!」


「ぅぅっ、だ、だってっ!私、多分見張られてるんだよ!?ずっと後をつけられてるみたいだし、あの石だって私を狙ってやったのかもしれないし!!わ、私を!!入院させる気なのかもしれない!!」


「おっ、落ち着け……お前、ちょっと頭がおかしいのかも……」


「いや違うって!頭おかしくないよ!本当のことを言ってるだけなんだよ!」



最初は意味の分からない事を言ってる私に怒りをぶつけていたものの、私の発言を聞いて明らかにドン引きしているのが見て分かる。
というか、その頭がおかしくなった奴を見るような目を今すぐやめて欲しい……

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