腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「なるほど……佐原君にそんな魔除け効果が……」


「……忠告はしたよ。僕も僕で証拠を集めるように務めるから……」


「あ!ちょっと待って!」


谷口が用は済ませたと言うように多目的室から出ようとしたので呼び止める。
嫌そうな顔で「……まだあるのかい」と言う谷口に苦笑する。



「いや……谷口先生的に、和泉さんと向坂君は付き合ってると思います?」


「あぁ……彼も物好きだよ、よりによって御影の恋人に手を出すなんて」


「じょ、情報集めてるだけとかじゃないんですか?」


「それは僕には分かりかねないが……そんなに気になるなら本人に聞けば良いじゃないか」



呆れた顔で言う谷口に、なんとももどかしい気持ちになる。
聞きたい気持ちは山々だけど、清水さんに後ろをつけられてるって考えたら、向坂君とは気軽に二人で話せないじゃないか。



「今の状況で二人で話したりしたら、向坂君に迷惑がかかるかもしれないし…」


「電話をすればいいじゃないか」


「電話番号知らないし……」


「……僕は和泉と向坂よりよっぽど君達の関係の方が気になるよ」



そう言って谷口は胸ポケットからメモ帳のような物を取り出すと、ボールペンで何かを書き始めた。
そして、何かを書き終えるとメモ用紙を私に手渡した。



「向坂の携帯番号だ。聞きたい事があるなら本人に直接聞きなさい」


「えっ!?な、なんで谷口先生が向坂君の携帯番号なんて知ってるんですか」


「僕はクラス担任だよ?生徒の連絡先ぐらい知ってる。それに、彼からは頻繁に脅しの電話がかかってくるからね……」



ブルっと身震いするような仕草をすると、谷口は今度こそ多目的室の扉から出て行った。

渡されたメモ用紙を見つめると、そこには向坂君の携帯番号と思われる物が書かれている。


(今日帰ったら連絡してみよ……)


メモ用紙を無くさないよう慎重に鞄の中に入れ、私も多目的室を後にした。


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