腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あーもう……どうした……」


「佳都!朝来たのになんで居なかったの!?あそこにいる女がね、朝私に突っかかって来たの!私と佳都の仲を嫉妬してるのか、被害妄想で逆恨みしてきて…」


「用事は?ないの?」



いつもは穏やかな口調の向坂君が、明らかに苛立たしげになっている。
一回収めたことをもう一度蒸し返された事で機嫌が悪くなってるみたいだ。

和泉さんもまさかそんな反応が返ってくると思わなかったのか、言葉を詰まらせていた。



「よ、用事って言うか……ただ会いに来ただけ。悪い?」


「悪いよ、今日は帰ってくれないか?」


「なっ!!い、意味分かんない!なんで私がそんな事言われなきゃいけないわけ!?」



納得がいかないというように、向坂君に食ってかかる和泉さん。
肝心の向坂君はひたすら面倒臭そうな顔をしながら溜息をついていた。

他人事のようにその様子を眺めていると、倉木さんが上機嫌で私に近づいてきた。



「いい気味じゃない?雪平さん」


「えっ、まぁ……?倉木さんこそ、そう思ってそうな顔してるけど…」


「当たり前でしょ。良かった、向坂君があんな女の味方じゃなくて」



うっそりと笑いながら私に耳打ちしてくる倉木さんに苦笑する。

そりゃ朝の一件を見てたら倉木さんがそう思うのも無理はないけど、いちいち私に耳打ちして来るってことはよっぽどご機嫌なんだろう。



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