腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
何度見てもとんでもない広さの豪邸だけど、ここまで広いと掃除とか面倒臭そうだよね。



「恵留」


「……あ、はい。なに?」



不意に名前を呼ばれる。

家族以外で滅多に下の名前で呼ばれる事がないから、どうしてもワンテンポ反応が遅れてしまう。

隼瀬君はジーッと私を見つめ、諭すように話し始めた。


「なにか学校で困った事があれば必ず俺に言うんだ。遠慮はしなくていい」


「困ったことねぇ……」


「俺のせいで嫌がらせを受けたり、怖い目にあったら絶対に俺に言って欲しい。隠される方が辛いんだ」



ふとこの間のガラスの件を思い出す。

あれは間違いなく私を狙っての事だろうし、原因は十中八九隼瀬君と交流しているからだ。


(でも、いざ言えって言われても言いづらいよね…)


言ったとして何をしてくれるかも分からないし、もう来るなって言われるのがオチだろう。

そんな事言われたら立花やその他の情報が全く聞けなくなってしまう。
それに、仲良くなってきたのにそんな終わりなのも悲しいし。

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