腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「……あ、まだ生きてる」
不穏な言葉と共に私を見つめるのは、先程の男ではなかった。
クリーム色の髪と、口にピアスが着いているこの男は、さっきの奴の仲間だろうか。
(にしては攻撃的じゃない感じするけど……)
雰囲気はどこか間延びしていて、眠そうな眼でジーッと私を見ている。
「俺は……名乗る程のもんじゃない……助けに来たって言うか……目覚めが悪くなるから?一応、様子見に来ただけ…」
「……さ、さっきの人の、仲間じゃ……?」
「……あぁ、久我のこと?仲間じゃない。俺は朝霧っていう、アンタの隣の隣のクラスの奴……」
名乗る程の者じゃないと言ってたのに結局名乗っている。
見るからに不良のような見た目だけど、話している感じ、本当にさっきの奴の仲間では無いんだろう。
それに、そんなに悪い人には見えない。
(……てか、さっきのやつやっぱり久我だったんだ…)
"生徒会"という単語が出てきてから薄々思っていたけど、彼……朝霧君が言ったことで確信に変わった。
「あ、朝霧、君……と、とにかく、ここを移動しない…?久我が戻ってきたら大変だし……」
「……あ、そう言えばそっか……」
朝霧君は納得したように頷くと、私の手を取り多目的室の外へ連れて行ってくれた。
私の手を握りながらスタスタと歩いてくれる目の前の人間に、なぜだか涙が出そうになった。