腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
めぐるの危険信号
朝霧君と向かったのは中庭のベンチ椅子のある所。

ここに来ると、どうも向坂君と倉木さんがチラついちゃうなぁ……


「あ、あの……手を離してもらっても……?」


「……あ、忘れてた」


ずっと私の手を握り続けていたので思わず声を掛けると、朝霧君はノロノロとした動きで手を離し、あろう事かその手をパーカーで軽く拭っていたのだ。

(な、なんて失礼な!!)

普通、自分から握ってきた癖に本人の見える所でそんな事するかね?
確かに緊張で手汗凄かったかもしれないけど、ちょっと傷付くよね。

と、憤慨する私をお構い無しに朝霧君は話し続けた。


「……久我に狙われるなんて、運が悪いね」


「え?あぁ、うん……朝霧君が来てくれなきゃ、本当にどうなっていたことか……」


今でも身震いする。

と言うか朝霧君は私と一緒に居て大丈夫なんだろうか。
もし、私と居る所を久我達に目撃されたら朝霧君だってただじゃ済まないかもしれないし…

そんな私の思考を知ってか知らずか、朝霧君は「俺……結構強いよ」と言って私の顔を覗き込んできた。


「……へ?」


「……キックボクシング、10年やってるから」


「す、凄いね……確かに、それだけ強いなら、朝霧君は久我に狙われても平気なのかな……?」


「うーん……それは分からない……」



なんだか雰囲気が掴みにくい。

穏やかと言うか、マイペースと言うか……
最近話した事の無い人種だ。

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