腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
そこで、昼休みに佐原君の後ろを付いて回るようにすることにした。

意外と佐原君自身は私が着いてくる事に対しては特に何とも思っていないみたいで、笑顔で話しかけてくれた。



「なあ、"雪子"」


「ゆ、雪子……?」


「そんな感じの名前だろお前?」


「惜しいけど普通に違うって!雪平恵留だよ!」


「同じようなもんだろーが」



一瞬ムスッとしたような顔をするも、佐原君はすぐに笑顔を見せた。

私から色々と踏み込んだ話や話題を提供しなきゃいけないと思っていたけど、佐原君は少しでも気を許した相手には意外と自分から興味を持つタイプだったらしい。

佐原君は普段の印象とは別人のようにペラペラと話し始めた。



「恋愛漫画とかってくだらねーよな?そう思わねえ?」


「え、思わないよ。私恋愛漫画とかも好きだし…」


「はあ〜?お前趣味わるっ!あんな人間と人間が訳分からない感情に流されてるだけの漫画の何が面白いんだよ!」



笑顔で話しかけてきたと思ったら、いきなり顔を顰めてうげ〜っ!とあからさまに嫌そうな顔をした。

と言うか女の子なら好きな人の方が多いと思う。あまり読まないとかならともかく、嫌いまで行く人の方が珍しいのでは……?



「えー、佐原君って人間の感情の変化とか好きじゃないの??」


「俺はそんな上辺だけの感情じゃなくて、もっとこう、奥底にあるドス黒い感情が好きなんだよ!浅いんだよ恋愛とかそーゆーの!」


「ええ……好きな子とか出来たことないの……?」


「無いね。俺からしたら人間なんて全部一緒だし。女と男も身体の作りが違うだけで、その他は全部一緒だ」


「ある意味男女平等ってことね……」



これはまたかなり独特な思考だ。

でも、彼の言っている事は強がりから来てるんじゃなくて、おそらく本当にそう思ってるから言ってるんだろう。


実際彼の読む漫画は全て、恋愛要素が薄いものばかり。
どちらかと言えば、人間の奥底に眠る狂気的な考えを題材に書いてる漫画がほとんどだった。

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