腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「……と、言う話らしいよ……」
「なるほどね。しかし、驚いたなぁ。まさか生徒会自体が腐ってたとは」
目を細めて口角を上げる向坂君はどことなく楽しそうな雰囲気が感じられる。
私達は、佐原君の話を報告する為にいつもの喫茶店に訪れていた。
想像以上に有意義な情報を持ってきたからなのか、向坂君の機嫌がいつもより良く思える。
「それもそうなんだけど、佐原君ってなんで立花君と仲良いのかなぁ……話が逸れて詳しく聞けなかったけど…ただの幼馴染なのかな?」
「ストレートに考えるなら家柄じゃない?性格も別に合ってないように見えるし」
「家柄?なんで?」
「あれ、雪平さん知らないの?佐原は良いとこのボンボンだよ」
え、普通に初耳なんだけども。
「えっ!?そうなの!?ぜ、全然お金持ちそうな雰囲気ないのに……」
「雪平さんが自分で言ってたじゃん、"プレミアがついたゲームばかりやってる"って。たかが学生が何十万するゲームを買える訳ないからね」
言われてみれば確かにそうだ。
佐原君の妙なフランクさと独特な性格に気を取られていたけど、立花と関係があるとするならまさにその部分だろう。
「じゃ、じゃあ、佐原君は家柄を気にして立花君と交流を持ってるってこと?」
「あるいは逆かもしれないけど……ま、そんな事はどうでもいいよ」
そう言うと、彼は私の顔を見てニコリと笑った。
「佐原の言い方だと、生徒会の中心人物は立花って事になるね?生徒会長じゃない理由も、いざという時にそいつに矢面に立たせようって魂胆だろう」
「周りの生徒会の人達も立花君のやった事とか知ってるのかなぁ…」
「全員立花の身内なのに知らないと思う?」
「それもそうだよね……あぁ、なんか嫌になっちゃうなぁ…」
机に突っ伏しながらため息を吐きながら言うと、向坂君は頬杖をつきながら「どうして?」と一言問いかけた。
「だって学校の代表となる人達がそんな感じなんだよ…?寄付金を積まれたぐらいでだんまりな学校が一番悪いんだけどさ…」
「だからこそ、俺達でその悪事を表に出そうとしてるんじゃないか」
私の手を握り、向坂君は見惚れるほど綺麗な笑顔を作った。
思わずポーっと向坂君の事を見つめていると、彼は念を押すようにもう一度私に語りかけた。
「俺と雪平さんなら絶対に上手くやれるよ。立花さえどうにかすれば、この学校も少しはマシになるだろうしね」
「そ、それは、そうかもしれない……けど……」
「雪平さんしか頼れる人が居ないんだ」
美しい瞳で見つめられると、なんでも言う事を聞いてしまいたくなる。
思わず吸い込まれそうになる瞳を見つめながら、私はこくりと頷いていた。