腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
目撃
『雪平さんしか頼れる人がいないんだ』
ぼーっとしながら昨日言われた言葉を思い出す。
愛しの向坂君が私だけを頼ってくれているなんて。
あんな綺麗な瞳に見つめられてNOと言える人間がこの世に居るのだろうか?
しばらくあの時の光景が脳を掠めていると、唐突に机を軽く蹴られる。
こんな事をするのは一人しかいない。
「おい、昼飯買いに行こうぜ」
ぷくーっとガムを膨らましてゲシゲシと私の机を蹴る佐原君。
彼のこういうフレンドリー(?)な所は結構好きなんだけど、気まぐれすぎるのがなぁ……
「あ、良いよ。なに買うの?」
「ダブルメンチカツサンド」
「それ結構人気なやつだよね?買えるといいけど…」
二人並んで購買に向かう。
本当なら向坂君とこういう事をしたいけど、私と彼の関係性が表に出ることはまず無いだろうから。
(それに、向坂君は私なんかと一緒に居る所見られたくないだろうしね)
自分でそう考えて落ち込む。
向坂君の周りはいつも人が居るし、可愛い女の子の知り合いも多い。
向坂君と私とじゃ釣り合いが取れて無さすぎる。