腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「雪平さん、新しいネタは手に入った?」
「…………」
「こっちも色々調べてはいるけど、中々情報が出てこないね。俺の知り合いは皆立花の事そんなに詳しくないし」
「………………」
「…………?雪平さん、どうかした?」
反応が無い私を不思議に思ったのか、向坂君は覗き込むように私を見つめた。
彼の瞳を見たらすぐに許してしまいそうになるのは分かっているので、目を逸らし、気を紛らわせるように紅茶を啜った。
「紅茶美味しい?」
「…………」
「そろそろ俺の事も構って欲しいんだけどなぁ」
向坂君は両手に顎を乗せてニッコリと笑った。
その仕草にぐっと心が揺らぎそうになる。
(だ、駄目だ……ここで許したら、良い感じに丸め込まれるに違いない)
あくまで主導権は私が握っておきたい。
「なぁに、雪平さん。今日は機嫌が良くないの?雪平さんの話聞かせてほしいな」
「………………機嫌は、悪いかも……」
「うん、どうして?」
「…………向坂君が私との約束破ったから」
「え?約束?」
向坂君は首を傾げて驚いて見せた。
なんのことを言ってるのか全く分かってないような態度に怒りが込み上げてくる。