腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

「……向坂君が言ったんじゃん。付き合う代わりに協力しろって。私はちゃんと協力してるじゃん」


「うんうん」


「なのに……なのに、倉木さんと付き合ってるのは酷いよ!そんなの付き合ってる意味ないじゃん!!」



後の方は感情的になって声が少し裏返ってしまっていた。
肩で息をしながら向坂君を見ると、彼は納得がいったように、あぁ、と呟いた。



「見てたんだ?俺と倉木さんのこと」


「そう、見てたよ。あんな甘い雰囲気で付き合ってないなんて嘘つかないよね……?」


「付き合ってないよ。だって俺、雪平さんと付き合ってるんだよ?そんな事したら浮気になっちゃうじゃん」



ヘラヘラと余裕そうな笑みを浮かべながら私と付き合ってるという事実を伝える彼に、ちょっとだけ心が満たされる。

あの向坂君が私を恋人として見てくれているという事実だけで最早許せそうになってしまったが、ここで折れたらおしまいだ。




「じゃあアレはなんだったの??まさか、ただ話してただけで肩なんか組んだりしないよね?」


「なんて説明したら良いか分からないけど……ストレートにそのまま伝えた方が、雪平さんは納得してくれる?」


「ご、誤魔化さないで言ってほしいけど……」




「倉木さんに、"谷口先生をそそのかして、生徒会が裏で行っている事の証拠を持ってきて欲しい"って頼んでたんだ」



一瞬、頭が真っ白になる。
人間あまりにも予想外な事を言われると、言葉が何も出てこなくなるらしい。

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